村田正弘(セルフメディケーション推進協議会専務理事)
27. 乾燥性皮膚用薬
地球温暖化が進んでいると報じられていますが、今は一番寒い季節です。この季節は肌が乾燥しやすく、女性には特に気になります。広告や店頭には様々な商品が宣伝されていて迷ってしまうことでしょう。今回は乾燥肌の原因と医薬品を使っての対策を説明します。
乾燥肌はなぜ起きる
皮膚の乾燥は、角質層中にある細胞間の脂質や保湿因子の減少によって、表皮の皮脂分泌が低下し角質層自体の水分量が少なくなるためで、カサカサやコチコチとした状態になります。これが原因ですが、この傾向を増長させるのが、低湿度、寒冷など季節的な環境、加齢、生活習慣、先天的な要因などがあげられます。これらは部屋の保湿や防寒対策、バランスのよい食事などセルフメディケーションでかなり効果的に予防できます。加齢と「私は肌がカサカサタイプなの」という要因をもつ方は、自覚して対策に一層心がけてください。
皮膚軟化薬の作用
原因がわかれば、対策がたてられます。角質を柔らかくすることと水分を保つ―保湿といいます―ことが第一です。表をみてお分かりになるように、この代表的なものはグリセリン、尿素、ヘパリンです。グリセリンは局法に収載されている医薬品です。尿素も単純な物質でほとんどの製品がこれを使用しています。ただ、少し刺激作用があるので、これを避けるため各製品が配合剤を工夫しています。ヘパリンは血液の凝固を防ぐ動物由来の物質で、皮膚軟化作用に応用しています。
皮膚の乾燥は刺激に敏感となってかゆみやまたそれによって炎症が起こるという厄介な二次症状が続きます。このため、製品にはジフェンヒドラミン、クロタミトンなどのかゆみ止め成分や炎症防止のグリチルリチン類を配合しているものがあります。
リドカインは局所麻酔作用をもち、ここでは一時的にかゆみを忘れさせるためでしょう。その他にビタミンE配合のものが多いですが、効果はどの程度あるかわかりません。むしろ、栄養バランスを考えビタミン補給の内服がよいでしょう。
皮膚軟化薬を使用するにあたっての注意
皮膚軟化薬はいずれも医薬品です。正しく使用すれば効果は確実です。しかし、成分は同じでも添加物によって合う、合わないことはあります。また、使用部位など注意書きをよく読んでください。薬剤師とよく相談して、試しながら合う製品を選ぶことを勧めます。医薬品以外化粧品類にも同様の効果をうたう製品が多く販売されています。ヒアルロン酸は医療用では関節炎などに使用される物質で、保湿作用があることも証明されています。また他にも天然物質の中には保湿効果のあるものは多くありますが、一般に高価です。まずは、適正な価格の医薬品で効果を確認される方が賢明な選択と思います。
乾燥性皮膚用薬
角質軟化・保湿成分 | かゆみ止め成分 | 抗炎症成分 | ビタミン類 | その他の成分 | 製品名 | 販売会社 | 剤形 |
グリセリン | 局方グリセリン | 健栄製薬 | 外液 | ||||
グリセリン | 水酸化カリウム | 局方グリセリンカリ液 | 健栄製薬 | 外液 | |||
尿素 | ケラチナミンコーワ20%尿素配合クリーム | 興和 | クリーム | ||||
尿素 | ケラチナミンコーワアクアプラス20 | 興和 | 軟膏 | ||||
尿素 | リベルタクリーム | 小林薬品工業 | クリーム | ||||
尿素 | グリチルレチン酸 | 新ケラチナミンコーワ20%配合クリーム | 興和 | クリーム | |||
尿素 | グリチルレチン酸 | ピロットUクリーム | 全薬工業 | クリーム | |||
尿素 | グリチルレチン酸 | VE | ワムナールプラスローション | ゼリア新薬 | 外液 | ||
尿素 | グリチルレチン酸 | VE,パンテノール | ワムナールDX | ゼリア新薬 | クリーム | ||
尿素 | グリチルレチン酸 | VE | スキンセーフやわ肌クリーム | エスエス製薬 | クリーム | ||
尿素 | グリチルレチン酸 | VE | チョコラザーネプラス | エーザイ | 軟膏 | ||
尿素 | グリチルレチン酸 | VE | パスタロンM20% | 佐藤製薬 | クリーム | ||
尿素 | グリチルレチン酸 | VE | パスタロンSEクリーム | 佐藤製薬 | クリーム | ||
尿素 | グリチルレチン酸 | VE | パスタロンSEローション | 佐藤製薬 | 外液 | ||
尿素 | グリチルレチン酸 | VE | フェルゼアHAローション | 資生堂 | 外液 | ||
尿素 | グリチルレチン酸 | VE | フェルゼアHA20クリーム | 資生堂 | クリーム | ||
尿素 | グリチルレチン酸 | VE | メンソレータム皮ふ軟化クリーム | ロート製薬 | クリーム | ||
尿素 | グリチルレチン酸 | VE | メンソレータムプレミアクリーム | ロート製薬 | クリーム | ||
尿素 | グリチルレチン酸 | VE | メンソレータムプレミアローション | ロート製薬 | 軟膏 | ||
尿素 | グリチルレチン酸 | VE | メンソレータムやわらか素肌ローション | ロート製薬 | クリーム | ||
尿素 | ジフェンヒドラミン | グリチルレチン酸 | ケラチナミンコーワ乳状液10 | 興和 | 外液 | ||
尿素 | ジフェンヒドラミン | グリチルレチン酸 | ケラチナミンコーワ乳状液20 | 興和 | 外液 | ||
尿素 | ジフェンヒドラミン | グリチルレチン酸 | ケラチナミンコーワ乳状フォーム20 | 興和 | 噴霧液 | ||
尿素 | ジフェンヒドラミン | VE | カンフル、リドカイン | ウレパールプラスクリーム | 大塚製薬 | クリーム | |
尿素 | ジフェンヒドラミン | VE | カンフル、リドカイン、 | ウレパールプラスローション | 大塚製薬 | 外液 | |
尿素 | ジフェンヒドラミン | グリチルレチン酸 | ウレパールプラスジェル20 | 大塚製薬 | 外液 | ||
尿素 | ジフェンヒドラミン | VE | カンフル、リドカイン | エピナール | 小林薬品工業 | クリーム | |
尿素 | ジフェンヒドラミン | グリチルレチン酸 | オイラックス潤乳液 | ゼファーマ | 外液 | ||
尿素 | ジフェンヒドラミン | グリチルレチン酸 | VE | リドカイン | フェルゼアDXローション | 資生堂 | 外液 |
尿素 | ジフェンヒドラミン | グリチルレチン酸 | VE | リドカイン | カユピタッククリーム | 祐徳薬品工業 | クリーム |
尿素 | ジフェンヒドラミン | グリチルレチン酸 | VE | リドカイン | カユピタッククリーム20 | 祐徳薬品工業 | クリーム |
尿素 | ジフェンヒドラミン | グリチルレチン酸 | VE | リドカイン | カユピタックローション | 祐徳薬品工業 | 外液 |
尿素 | ジフェンヒドラミン | グリチルレチン酸 | VE | リドカイン | カユピタックローション20 | 祐徳薬品工業 | 外液 |
尿素 | ジフェンヒドラミン | グリチルレチン酸 | VE | リドカイン | ふわふわワムナール | ゼリア新薬 | 噴霧液 |
尿素 | クロタミトン・ジフェンヒドラミン | グリチルレチン酸 | VE | メディナースUローション | ライオン | 外液 | |
尿素 | クロタミトン・ジフェンヒドラミン | グリチルレチン酸 | VE | メディナースU乳液 | ライオン | 外液 | |
尿素 | クロタミトン・ジフェンヒドラミン | グリチルレチン酸 | VE | メンソレタームADクリーム20 | ロート製薬 | クリーム | |
尿素 | クロタミトン・ジフェンヒドラミン | グリチルレチン酸 | VE | メンソレタームADプレミア乳液a | ロート製薬 | 外液 | |
尿素 | クロタミトン・ジフェンヒドラミン | グリチルレチン酸 | VE | メンソレタームADプレミア乳液20 | ロート製薬 | 外液 | |
ヘパリン類似物質 | 新メディナースHPクリーム | ライオン | クリーム | ||||
ヘパリン類似物質 | キンカンHPローション | 金冠堂 | 外液 |
2008年01月 掲載
■テーマ
1. 薬に関する仕組み2. 薬の作用効果と副作用
3. 薬の作用 投与経路と薬の生体内運命
4. 薬の作用 用量と効果、用量と毒性の関係
5. 一般用医薬品の選び方、使い方(1) 花粉症のくすり
6. 一般用医薬品の選び方、使い方(2) 乗物酔い防止薬
7. 一般用医薬品の選び方、使い方(3) 整腸薬
8. 一般用医薬品の選び方、使い方(4) 水虫の薬
9. 一般用医薬品の選び方、使い方(5) 虫さされ・虫よけの薬
10. ビタミン含有保健薬
11. 外用殺菌消毒薬
12. うがい薬
13. 解熱鎮痛薬
14. 小児用かぜ薬
15. 整腸薬と便秘薬
16. 胃の薬
17. 痔の薬
18. にきびの薬
19. 更年期障害の薬
20. 目薬(1) 目が赤くなったり、かゆい時
21. 目薬(2) 洗眼とドライアイ
22. 目薬(3) 一般点眼薬
23. うおのめ、いぼ、たこの薬
24. 口腔内殺菌薬
25. 口内炎の薬
26. 歯痛や歯槽膿漏の薬
27. 乾燥性皮膚用薬
28. 発毛・養毛薬
29. 高コレステロール薬
30. 催眠・催眠鎮静薬
31. 眠気防止薬