村田正弘(セルフメディケーション推進協議会 常任理事)
29. 高コレステロール薬
地球温暖化に対する危機感がかなり伝わってきましたが、一方で今年の冬は実感として寒かったと思います。その冬も過ぎ、春が来ました。卒業、進学、就職あるいは退職と変化の季節です。春は年度の切り替え時期で、制度がいろいろ変わります。医療関連では2年毎の診療報酬制度の改定年です。ニュースでは救急車が患者の収容先を探して・・・時間、病院が経営難で倒産、地域では医師とりわけ産科、小児科の医師がいない・・・。 今回の改正で健康診断、健康診査(健診)と保健指導の方向性が大きく変わり、内臓脂肪症候群(メタボリックシンドローム)の概念を導入したプログラムを基準にしたものとなります。詳しくは厚生労働省のホームページや実施主体となる保険者からの説明をきいていただくとして、今回はSMACが提唱している“まずは食事・運動そして適切な薬やサプリメントの使用”の方針にしたがって「薬」について述べてみます。 メタボリックシンドロームに対応する薬
“メタボ対策の薬なんかあるの?” この質問には慎重に答えなければなりません。誤解されると薬を飲めば、あるいは飲んでいれば生活習慣を変えなくてもいいとなってしまうからです。糖尿病にも高脂血症にも効く薬はあります。しかし、このような症状や疾患を防ぐ主役は正しい生活習慣です。ただ薬の中には、症状が発生しにくくする、あるいは軽症のうちに使用して重くしないように支援するものがあります。多くの薬は循環器官用として「医療用」ですが、血液の中の脂を減らし、血管に吸着させないコレステロール低下の効果をもつ「一般用」がありますので説明しましょう。
高コレステロール薬の種別と作用
コレステロールというのは身体の構成成分で重要な役目をもっています。コレステロールは身体の中でも作られますが、食物として他の動物が作ったものをいただいています。困ったことに、一般的にコレステロールはおいしいのです。高脂血症を防ぐには、少々おいしいものを我慢し、薬によってコントロールします。「医療用」にはスタチン系、フィブラート系といった効果てきめんといったものがありますが、日本では一般用としては販売されていません。しかし、コレステロールの吸収を防ぐ薬やビタミン系統の薬は市販されています。大豆油不けん化物は植物ステロールが主成分で、ポリエンホスファチジルコリンも大豆から抽出された物質で同様に脂質代謝を正常にして血清中のコレステロールを低下させる作用が認められています。 一方、ビタミン類としてビタミンB2、E、パンテチンが含まれています。同じビタミンといってもパンテチンは少し違います。これはコエンザムAという脂肪酸代謝に関わる補酵素を作る物質として重要です。この効果は臨床試験でも証明されていて、「医療用」としても使われています。一般用の説明には書いてありませんが、医療用には「弛緩性便秘」と効能・効果に記載されていて、恩恵にあずかる方もいるでしょう。B2は酸化還元酵素の補酵素として糖質、脂質、たんぱく質の代謝に機能します。 しかし、これを摂取したからといってすぐに高コレステロール血症改善につながるでしょうか。Eも広く抗酸化作用を有し、血管強化が認められていますが、高コレステロールが低下するとはいえません。「薬」の説明書は一様に「血清高コレステロールの末梢血行障害の緩和」と書いてあるだけで、これがメタボにつながる血管の脂肪沈着との相関については書いてありません。このような作用の「目的違い」をどうして判断するのでしょうか。 薬の選択と相談の重要性
少し難しい説明になりましたが、メタボ対策の「一般用医薬品」があることがおわかりいただけたでしょうか。「薬」ですから副作用が皆無とはいえませんが、原料などを考えれば有害作用は少ないでしょう。現に外国では安全な「薬」として位置づけられ、日本でも「医療用」として保険薬価にのっています。値段を較べると、保険薬価がやや市販希望価格より高いようです。保険ならば自己負担は3割ですが、診断料、調剤料がかかります。一般用でも成分量が全く同じなのに値段が倍近く違うものがあります。健康食品の中には同じような成分を含む「商品」を医薬品ではないといって高額で売り込むものがあるので注意してください。相談が大事です。この領域こそ信頼できる薬剤師の知識と良心が発揮される場です。 行政にも注文があります。国民の健康管理を目的に、健診・保健指導を改正し、医療費を抑制しようとするならば制度だけでなく、背景にある環境の整備も必要です。製薬企業、医師・薬剤師などの患者さんに接する医療提供者も含め国民の視線で話し合いを進めるようお願いします。 高コレステロール薬
2008年03月 掲載
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