セルフメディケーションを実践のための200テーマ

村田正弘(セルフメディケーション推進協議会専務理事)

30. 催眠・催眠鎮静薬
 「春眠あかつきを覚えず」と昔の人は粋なことを言いました。きっと、今よりずっとスローライフだったのでしょう。現代は何かつかれたように何もかもが急いでいるようで、それだけストレスがたまってイライラ感がつのっているように感じられます。落ち着かない、眠れないと訴える方が増えています。そんなときどうするか、今回は睡眠についてお話をします。
不眠症の治療法
 不眠症については「今月の健康情報」で加藤哲太先生が詳しく説明されていますから参照して頂くとしてポイントだけを述べます。眠れなくてイライラしている方に、「もっとリラックスして睡眠できるように心を落ち着けることです」などというときっと叱られるでしょう。

 「そんなことはわかっている。それでも寝られないから困っているんだ」。その通りなんですが少し考えを変えてみたらいかがでしょう。ぐっすりと眠らなくても「身体を横にしているだけ」でもかなりの休息はとれます。春眠でも眠りが浅くなるのは、年のせいもあって仕方ないとすると気が軽くなります。忙しくて寝るひまもない・・・といっている方もともかく一定時間「身体を横にして」みてください。  
不眠症を薬で治す方法
 不眠症を「薬」で治す方法はあります。「眠り薬」のことを催眠薬、催眠鎮静薬といいますが、主に医療用として使われています。睡眠導入をするものや、熟睡させるものなどがあり、効果も確実です。しかし、使い方によっては「麻酔薬」にもなり、またほぼ全てのこれらの「薬」は使いかけると止められなくなる習慣性―今は依存性といいます―があり、また記憶力を減退させるという論文もあり、医師の診断がないと使えません。

 OTC薬にはないのでしょうか。いいえ、いくつかの「催眠・催眠鎮静薬」があります。成分は医療用のものとは違います。多くのものは生薬エキスや漢方由来のものです。カノコソウ、ホップ、トケイソウなど古今東西で使われてきた鎮静効果があると伝えられてきた植物のエキスを主体としています。

 ブクリョウ、センキュウ、サイコなど9種のエキスを含みます。抑肝散加芍薬黄連という漢方に由来しています。使うにあたって、医療用の睡眠導入効果を期待しないでください。鎮静することによって睡眠へ、スローライフへの生活見直しのきっかけにと考えてください。

 抗ヒスタミン薬を成分とした「眠り薬」、正確には「眠気薬」があります。なぜなら、塩酸ジフェンヒドラミンは医療用ではアレルギー疾患、すなわちヒスタミンを抑え鼻水、かゆみを抑える花粉症や皮膚掻痒症の治療薬です。そして、重大な基本的注意事項として「眠気を催すことがあるので、自動車の運転等、危険を伴う機械の操作はしないように」と明記してあります。

 医療用の「副作用」がOTCでは「主作用」になったわけです。週刊誌などが「睡眠改善薬」としてとりあげていますが、改善するとは思えません。この他にブロムワレリル尿素など尿素系の成分を含んでいる製品があります。これらは、昔作家などが愛用した「眠り薬」ですが、やはり過去の薬です。には入れていませんが、解熱鎮痛薬の成分として同じ成分が含まれている製品があります。
「薬」を使用するにあたっての注意
 「眠り薬」は正しく理解して使ってください。抗ヒスタミン薬には「眠気」の作用以外にも「副作用」があります。抗コリン作用があり、前立腺肥大の方や緑内障の方には使ってはいけない薬です。また、眠気の効果は人によってかなり違うとされています。いうまでもないことですが、使ってから車を運転したら犯罪です。漢方や生薬エキスを主体とした「薬」は鎮静であり、副作用はまずないと考えてよいでしょう。

 少し、スピードを落として「春眠あかつきを覚えず」の境地を想像してみると案外心地よい眠気がおそってくるかも知れませんよ。セルフネムケーション!!

催眠・鎮静薬
抗ヒスタミン成分生薬成分(エキス)その他の成分製品名販売会社剤形
塩酸ジフェンヒドラミンドリエルエスエス製薬錠剤
塩酸ジフェンヒドラミンドリエルEXエスエス製薬軟カプセル
塩酸ジフェンヒドラミンナイトールグラクソスミスクライン錠剤
塩酸ジフェンヒドラミンナイフル日邦薬品工業錠剤
塩酸ジフェンヒドラミンネオディ大正製薬錠剤
塩酸ジフェンヒドラミンブロムワレリル尿素 アリルイソプロピルアセチル尿素ウット伊丹製薬錠剤
カノコソウ パッシフローラ チョウトウコウ ホップ イララック小林製薬カプセル
カノコソウ チョウトウコウ ホップ トケイソウ クラテグス 静思奏龍角散錠剤
カノコソウ チョウトウコウ ホップ トケイソウ クラテグス プライケアジェーピーエス製薬糖衣錠
パッシフローラ セイヨウヤドリギ カギカズラ ホップパンセタン佐藤製薬錠剤
カノコソウ チョウトウコウ ホップ トケイソウ ニンジン ブネッテンエスエス製薬錠剤
カノコソウ チョウトウ ホップ チャボトケイソウ ニンジン メンテックエーザイ錠剤
カノコソウ チョウトウ ホップ チャボトケイソウ ニンジン メンテック顆粒エーザイ顆粒
カノコソウ チョウトウ ホップ チャボトケイソウ ニンジン メンテックハーブエーザイ錠剤
ブクリョウ カンゾウ センキュウ サイコ チョウトウコウ ソウジュツ トウキ シャクヤクナビゲート顆粒日東薬品工業顆粒
ブクリョウ カンゾウ センキュウ サイコ チョウトウコウ ソウジュツ トウキ シャクヤクレスティ顆粒大正製薬顆粒
ブクリョウ カンゾウ センキュウ サイコ チョウトウコウ ソウジュツ トウキ シャクヤクレスティ錠大正製薬錠剤
2008年04月 掲載
■テーマ
1. 薬に関する仕組み
2. 薬の作用効果と副作用
3. 薬の作用 投与経路と薬の生体内運命
4. 薬の作用 用量と効果、用量と毒性の関係
5. 一般用医薬品の選び方、使い方(1) 花粉症のくすり
6. 一般用医薬品の選び方、使い方(2) 乗物酔い防止薬
7. 一般用医薬品の選び方、使い方(3) 整腸薬
8. 一般用医薬品の選び方、使い方(4) 水虫の薬
9. 一般用医薬品の選び方、使い方(5) 虫さされ・虫よけの薬
10. ビタミン含有保健薬
11. 外用殺菌消毒薬
12. うがい薬
13. 解熱鎮痛薬
14. 小児用かぜ薬
15. 整腸薬と便秘薬
16. 胃の薬
17. 痔の薬
18. にきびの薬
19. 更年期障害の薬
20. 目薬(1) 目が赤くなったり、かゆい時
21. 目薬(2) 洗眼とドライアイ
22. 目薬(3) 一般点眼薬
23. うおのめ、いぼ、たこの薬
24. 口腔内殺菌薬
25. 口内炎の薬
26. 歯痛や歯槽膿漏の薬
27. 乾燥性皮膚用薬
28. 発毛・養毛薬
29. 高コレステロール薬
30. 催眠・催眠鎮静薬
31. 眠気防止薬