村田正弘(セルフメディケーション推進協議会専務理事)
31. 眠気防止薬
前回は眠れない方に睡眠をとる、鎮静をうながす「薬」を紹介しました。今回は逆です。眠らないで頑張っていても疲労が重なってくれば、眠くなり身体を休めたくなるのが自然です。社会生活の中ではこの生理現象に逆らう必要がある場合が生じます。
残業や試験勉強はもともと無理な強制ですから、仕事量をできる限り計画的に処理するよう健康管理に心がけてください。しかし、車の運転ややむをえない仕事で、眠気が重大な事故につながる可能性がある場合、精神力だけでは危険な場合に「薬」を使うことを考えてよいでしょう。
眠気防止薬の成分
眠気防止には中枢神経興奮作用のあるカフェインが主役です。カフェインはチョコレートやお茶、コーヒーに含まれています。眠気を抑えることをはっきりさせているのは付表にある「医薬品」で、説明書にカフェイン量が明示されています。普通1回100mg以上を服用すれば神経が興奮し、頭はかなりはっきりします。効果の発現は剤形によって違いますが、10分もすれば現れます。どのくらい続くかが問題ですが、2、3時間と考えてください。まだ眠いといって再度使うのはいけません。説明書にも4時間以上間隔をあけるまたは1日に2回使ってはいけないという表現で書いてありますから注意を守ってください。
お茶やコーヒー、カフェインに含まれる量も低いとはいえません。確かに「医薬品」の量には及びませんが、何杯もいくつも食べるとかなり接近します。カフェインはキサンチン系といわれる化学構造式をもっていて、テオフィリンという喘息に使用する薬やチョコレートにも類似した成分が含まれています。これらの成分の合計した量が中枢神経系に作用するので注意が必要なのです。
眠気防止薬に含まれる他の成分は多くがビタミン剤や類似成分で、疲れた感じを賦活するとして配合していますが、眠気をとる作用はありません。
嗜好品と薬の使い分け
少々の眠気防止ならコーヒーやチョコレートのような嗜好品を勧めます。ガムのような手軽のものもあり、美味ですし、ちょっと一息入れることによって緊張をほぐすことになるからです。どうしても、「眠ってはいけない!」と覚悟をきめたら、「医薬品」を使いましょう。中途半端に両方を併用しないでください。カフェインの量が増えて、イライラ感が生じ、不安等につながり、眠ろうとしても眠れない状態になりやすいからです。
眠気防止薬を使うにあたっての注意
大切なことはすでに述べましたが、眠気防止薬は眠い時の緊急避難に使う薬と考えてください。したがって「常用」してはいけません。眠気防止薬
ビタミン類 | その他の成分 | 製品名 | 販売会社 | 剤形 | |
カーフェソフト | エーザイ | ||||
カフェロップ | 第一三共ヘルスケア | 舐剤 | |||
ダイヤルモカ | ジェーピーエス製薬 | 錠剤 | |||
トメルミン | ライオン | 錠剤 | |||
B1、B2、バントテン酸、 | タウリン | アオーク(AWOUK) | 大正製薬 | 内液 | |
B1 | エスタロンモカ錠 | エスエス製薬 | 錠剤 | ||
B1、B6、B12 | エスタロンモカ12 | エスエス製薬 | 錠剤 | ||
B1、B6、ニコチン酸アミド | グリセロリン酸カルシウム | エスタロンモカ内服液 | エスエス製薬 | 内液 | |
B6 | カフェクール | アラクス | 顆粒 | ||
B6、B12 | カフェクール200 | アラクス | 顆粒 | ||
B1、B2、B6、パントテン酸 | タウリン、イノシット、ゴオウ | ポンツシン内服液 | ゼリア新薬 | 内液 | |
B1、B6、B12、 パンテノール | タウリン、グリセロリン酸カルシウム | モカ内服液 | 第一三共ヘルスケア | 内液 |
2008年05月 掲載
■テーマ
1. 薬に関する仕組み2. 薬の作用効果と副作用
3. 薬の作用 投与経路と薬の生体内運命
4. 薬の作用 用量と効果、用量と毒性の関係
5. 一般用医薬品の選び方、使い方(1) 花粉症のくすり
6. 一般用医薬品の選び方、使い方(2) 乗物酔い防止薬
7. 一般用医薬品の選び方、使い方(3) 整腸薬
8. 一般用医薬品の選び方、使い方(4) 水虫の薬
9. 一般用医薬品の選び方、使い方(5) 虫さされ・虫よけの薬
10. ビタミン含有保健薬
11. 外用殺菌消毒薬
12. うがい薬
13. 解熱鎮痛薬
14. 小児用かぜ薬
15. 整腸薬と便秘薬
16. 胃の薬
17. 痔の薬
18. にきびの薬
19. 更年期障害の薬
20. 目薬(1) 目が赤くなったり、かゆい時
21. 目薬(2) 洗眼とドライアイ
22. 目薬(3) 一般点眼薬
23. うおのめ、いぼ、たこの薬
24. 口腔内殺菌薬
25. 口内炎の薬
26. 歯痛や歯槽膿漏の薬
27. 乾燥性皮膚用薬
28. 発毛・養毛薬
29. 高コレステロール薬
30. 催眠・催眠鎮静薬
31. 眠気防止薬