― 生活者からみたセルフメディケーションのあり方 ―
辻本利雄
認定NPO・SMAC理事
東京農業大学非常勤講師
薬学博士、工学修士
「セルフメディケーションとは何か」については、前回の本オピニオンを確認下さい。
私は薬剤師ではないことをお断りしておきます。しかし、30年薬科大学に在職していましたので、一般生活者よりは薬学に関係する部分についての情報は入手しやすい立場にいました。この経験と立場からセルフメディケーションのあり方について述べます。
この言葉は、以前、あるドラッグストアの猿を登場させたTVコマーシャルや宮藤官九郎脚本田中麗奈主演映画「ドラッグストアガール」中で言われていました。
そして、昨今、サプリや健康食品の広告が新聞に掲載されない日は無く、さらに毎日のように折り込み広告が入ります。TVコマーシャルでも同様です。
このことから一般生活者が「健康」にいかに関心を持っているか伺えるのではないでしょうか。他方、「セルフメディケーションとは何か」に関してのアンケート調査では、セルフメディケーション、OTC医薬品と医療用医薬品の違いについて「知らない」と答えた人がおおよそ80%でした1-3)。
区民まつり1) | 区民まつり2) | 市民大学3) | ||
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セルフメディケーションについて | 知っていた | 24%(男)、24%(女) | 0%(男)、5%(女) | 23% |
言葉を知らない | 76%(男)、76%(女) | 89%(男)、70%(女) | 77% | |
OTC医薬品と医療用医薬品の違い | 知っていた | 26%(男)、14%(女) | 13%(男)、21%(女) | 20% |
知らない | 74%(男)、86%(女) | 85%(男)、78%(女) | 80% |
日本の医療費問題は、生活者一人一人が現実味を持って考えなくてはならない時になっているのですが……。
港区民まつりの健康関連ブースや薬科大学の市民大学講座へ大勢の参加者がいることから察するに、一般生活者は自分の「身体・健康」について大いに関心を持っています。
健康について「相談するところは?」、「相談は誰に?」。それは「薬剤師でしょ〜」。
「いつ?」。「今でしょ!」
現在、よく耳にする「かかりつけ薬局」、「地域に密着した薬局」。
だが、薬剤師がそれに呼応出来ている現状でしょうか。
ここのところ改憲論が話題になっていますが、憲法25条(生存権・国の社会的使命)とこれに関する薬剤師法第1条(薬剤師の任務)の遵守は大事です。(下図参照)
7年前の2006年、国民の期待・要望に応える高度先端医療・患者中心の医療に対応する目的で薬剤師教育に6年制が導入されました。従前の薬学教育では不十分と思われ、国は実践に即した対人重視の臨床薬剤師輩出の責務があるとされました。
だが、今般の日本薬学会は大学の6年制薬学が創薬研究者輩出志向を強く打ち出しています。(薬学での研究者志向は4+2年制とされています。)
薬学が創薬を担うという自負は今では過去のこと。広い視野のもと、工学、理学、農学、農芸化学等各領域の専門職、技術者が挑戦しています。しかし彼等は「人」相手の臨床分野には立ち入れない。そこに関われるのは薬剤師です。
薬剤師の皆さん、今皆さんの周りにいる生活者、健康な人も患っていても誰もが自分の健康には関心を持っています。どうぞ一言言葉をかけて、セルフメディケーションの積極的実行を推し進めて下さい。生活者は健康についての専門知識と豊富な技術を持つ薬剤師、皆さんからの助言を待っています。
参 照1)東京都港区主催の「2012(第31回)みなと区民まつり」にSMAC参加の「健康相談及び健康運動」、参加者のアンケート調査(総人数260人)を安田俊道理事がまとめたもの。
2)東京都港区主催の「2011(第30回)みなと区民まつり」にSMAC参加の「健康相談及び健康運動」、参加者のアンケート調査(総人数256人)を安田俊道理事がまとめたもの。
3)2011年7月17日開催明治薬科大学市民大学講座でのアンケート調査(講師:村田正弘SMAC専務理事、提出者51名)