―自分なりのセルフメディケーションを目指して!―
古田榮敬
認定NPO・SMAC理事
医学博士
(公財)がん集学的治療研究財団 事務局長
学校法人共済学園 日本健康医療大学 客員教授
セルフメディケーションという言葉を思いつつ、人類の共通の願いである健康で爽やかな生涯を目指して我々は、日々努力をしているが、日々の生活を振り返ってみると後悔は先にたたずの如く反省しきりであることは誰もが実感している事と思います。我国の人口構成を振り返ってみると昭和25年当時は、高齢者の占める割合は少なく若年者になるほど数が増加する富士山型を示していました。この形状は、高出生、高死亡の人口動態の特徴を示しています。その後、1次、2次のベビーブームによる突出はあるものの徐々に出生率は低下しました。また、死亡率の低下により平均寿命は、飛躍的に延長して高齢者は増加しました。これらの少子高齢化現象の結果として、平成19年の日本の人口構成は、58歳〜60歳と33歳〜36歳を中心とした2つの膨らみを持つ型となっています。65歳以上の人口が4分の一を超える超高齢化社会を迎えている日本。現在、健康寿命と平均寿命に大きな差があることが注目されており、この差は男性で約9年、女性では約12年におよび、健康寿命を少しでも寿命に近づける事が大切であります。加齢に伴い、特に筋肉や骨・関節が弱まることで日常生活に大きな影響を受けている高齢者の増加が顕著で、要介護や寝たきり老人ともなる高齢者の虚弱化は、近年、重大な健康リスクの一つとして注目されています。
この人口構成の変化に伴いそれと共に国の衛生行政の面においても高齢者の医療費の増大、高齢者介護の対応、労働人口の減少に伴う雇用の確保の問題等経済をはじめとするさまざまな領域における都会と地方の地域格差の諸問題が提起されています。また、以前は、感染症対策、公害対策が衛生行政の中心課題であったが、近年は、生活習慣病対策に重点がシフトされています。生活習慣病は、当初は、成人病という言葉で表現されていました。昭和32年に開催された成人病予防対策協議連絡会において「成人病とは主として脳卒中・がんなどの悪性腫瘍、心臓病などの40歳前後から急に死亡率が高くなり、しかも全死因の中でも高位を占め、40〜60歳位の働き盛りに多い疾病を考えている」と記述があります。脳卒中・がん・心臓病といった疾病は、年齢の上昇に従ってその頻度が増加する性質があるため、人口の高齢化にともない患者数の増加が予測されます。しかし、喫煙と肺がんや心臓病、動物性脂肪の過剰摂取と大腸がん、肥満と糖尿病など、食生活や運動などの生活習慣の改善によりある程度予防が可能であることも分ってきたことから、発症そのものを予防する考え方が重視されるようになってきました。疾病の予防対策には、健康を増進し、発病を未然に予防する一次予防、早期発見・早期治療を目的とする第二次予防、リハビリテーション等による社会復帰を目的とした第三次予防があります。
このうち一次予防対策では一人一人が日々の生活習慣を改善し、健康増進に努めることが基本となります。このような状況を背景に生活習慣病に対する一次予防の具体的な施策として、壮年期死亡の減少、健康寿命の延伸と生活の質の向上を目的とした「21世紀における国民健康づくり運動」(健康日本21)が平成12年度に開始されました。これをバックに厚生労働省では「適度な運動」「適切な食生活」「禁煙」を焦点とした生活習慣病予防のための新たな国民運動「健やかな生活習慣国民運動」を産業界や地域社会等と連携しながら展開することとし、そのキックオフイベントとして「元気!2008 健康日本21〜健やかな生活習慣国民運動〜」が、平成20年11月に開催されました。さらに、栄養・食生活は、多くの生活習慣病との関連が深く、また、生活の質との関連も深いことから、身体的・精神的・社会的に良好な食生活の実現を図るため厚生労働省においては、食生活指針及び健康づくりのための休養指針を策定し注意を喚起しておりますので活用していただきたいと思います。
食生活指針
平成12年('00)3月
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健康づくりのための休養指導
平成6年('94)4月
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以上の様に、国民の健康増進を推進することは、もはや待ったなしの状況を踏まえ国は、食生活指針及び健康づくりのための休養指針を策定して国民の健康に関する意識の啓蒙に積極的に取り組んできました。また、WHOにおいても積極的に健康に関するセルフメディケーションのための条件及び薬剤師の役割について以下のように述べています。
WHO : The Role of the Pharmacist in Self-Care and Self-Medicationから |
セルフメディケーションのための条件: ①適切な医薬品(品質、有効性、安全性が保証)を、 ②適切な情報(効能効果、副作用、専門家へのアクセスすべき時期等)に 基づき、 ③適切に服用(量、剤型等)すること。 |
そのための薬剤師の役割: ①情報を提供する者として:適正使用のための情報提供、症状や病状の確認 と適切な医療へのアクセス確保等 ②質の高い医薬品を提供する者:医薬品の品質を保証すること ③指導者として:提供するサービスの質の確保と最新化のための自己研鑽等 ④健康増進を図る者として:地域の疾病予防や健康問題の普及啓発を進める こと |
終りにすでに皆様におかれましては何度も見聞きしているかと思いますが、私が厚生省にいました昭和50年代から御指導いただいております、SMACの会長であります池田先生が提唱されております「一無・二少・三多」のライフスタイルについてふれます。「一無は禁煙、二少は少食と少酒、三多は多動・多休・多接で、運動・休養、そして多くの人・事・物に接するということです。」すべてを着実に実行することは至難の業ですが、常日頃から心掛けて、習慣は第2の天性といわれています。是非習慣づけて少しずつ実行することが涵養であると思いますので皆様に是非お勧めしたく池田先生に無断で借用しましたが、是非活用していただき健やかな日々を過ごしていただけましたら望外の喜びであります。