―国民皆保険制度を堅持するために―
小山田光孝
NPO法人・SMAC 理事
日医工株式会社 東京本社営業本部アドバイザー
セルフメディケーションは、世界保健機関(WHO)において、「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」と定義されております。
我が国においては、セルフメディケーションを推進するにあたり2017年1月1日から始まったセルフメディケーション税制でありますが、当税制の創設趣旨は、国民の健康維持の自助努力を促し、大病院での待ち時間短縮や本当に緊急な患者への速やかな対応を可能にすることを目的として設立されました。
当税制の概要としては、適切な健康管理の下で医療用医薬品からの代替を進める観点から、健康の維持増進及び疾病の予防への取組として一定の取組(※1)を行う個人が、2017年1月1日から2021年12月31日までの間に、自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族に係る一定のスイッチOTC医薬品(※2)の購入の対価を支払った場合において、その年中に支払ったその対価の額の合計額が1万2千円を超えるときは、その超える部分の金額(その金額が8万8千円を超える場合には、8万8千円)について、その年分の総所得金額等から控除するとしております。
(※1)特定健康診査、予防接種、定期健康診断、健康診査、がん検診
(※2)要指導医薬品及び一般用医薬品のうち、医療用から転用された医薬品をいう。
(類似の医療用医薬品が医療保険給付の対象外のものを除く。)
なお、本特例の適用を受ける場合には、現行の医療費控除の適用を受けることができないこと。また、対象となる医薬品(医療用から転用された医薬品:スイッチOTC医薬品)については、スイッチOTC医薬品の成分数:86成分(2019年4月15日時点)となっております。詳しくは地域の薬局薬剤師にお尋ねください。
対象となる医薬品の薬効の例:
かぜ薬、胃腸薬、鼻炎用内服薬、水虫・たむし用薬、肩こり・腰痛・関節痛の貼付薬
(注)上記薬効の医薬品の全てが対象となるわけではありません。

―厚生労働省 HPより―
我が国における国民皆保険制度は1964年4月からすべての市区町村で新国民健康保険法が実施されることとなり、国民皆保険が達成されております。また、国民皆保険制度の意義として、我が国は国民皆保険制度を通じて世界最高レベルの平均寿命と保健医療水準を実現しております。
なお、今後とも現行の社会保険方式による国民皆保険を堅持し、国民の安全・安心な暮らしを保障していくことが必要とされております。
我が国の国民皆保険制度の特徴として、「?国民全員を公的医療保険で保障する。?医療機関を自由に選ぶことができる。?安い医療費で高度な医療が行える。?社会保険方式を基本としつつ、皆保険を維持するため、公費を投入せざるを得ない。」でありますが、近年では少子・高齢化や被保険者の減少あるいは高度医薬品・医療機器化に伴う医療費の高騰など、国民皆保険制度の破綻をもたらす状況にあります。無駄な医療費を削減して国民皆保険制度の維持をさせるためにも国民一人一人がセルフメディケーションへの意識を高めていく必要があると思います。
最後に、従来型の医療費控除の適用を期待してコツコツ領収書をストックしても「10万円超」という高いハードルに阻まれてきた病者にとって足切り額「1万2千円」というのはかなり嬉しいことですね。できれば、もっと足切り額の減額を望みたい!
ところで、セルフメディケーション税制の対象となるのは「スイッチOTC医薬品」ということですが、薬局に行っても、どれが「スイッチOTC医薬品」なのか判らないことが多く、値札の横に大きく書いてある薬局もあれば、「セルフメディケーション税制の対象です!」とまで書いてあるところもあれば、何も表示していないところもあり、店によって対応はまちまち。もっとずば抜けて判りやすい表示を義務化すればいいのにねぇ…。
【参考資料】
厚生労働省HP
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000124853.html
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/iryouhoken01/index.html
https://www.mhlw.go.jp/bunya/shakaihosho/iryouseido01/info02d-23.html