セルフメディケーション・オピニオン

「私から見たセルフメディケーション」
―「セルフメディケーション」って何ですか?―

盒鏡蕾損

盒鏡蕾損

NPO法人・SMAC 理事
薬剤師、(株)オフィス タカハシ取締役

 「セルフメディケーション」とはわかっているようで、わからない不思議な言葉である。確かにWHO定義では「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」となっている。
 では「健康に責任を持つということは?」と考えた時、最初に思いつくのは自分の体の状態を知ること。つまり健康診断の結果で、自分の体の現状を謙虚に受け止めることと気がつく人は何人いるだろうか?結果を見た直後は、やれ血圧が高いだの、糖尿病予備軍だのと騒いで食生活の見直しをするが、長続きはせず、翌年の健康診断の結果で、また同じことを繰り返す人が実に多い。謙虚に結果を受け止めれば、自分の生活の見直しをして、運動の必要性や栄養バランスの改善に積極的に取り組むはずである。
 ではどのように取り組んでいくのか?自分の知識だけでは不安な時、簡単に相談にのってくれる相手を探したくなる。まずは「家族かな?」と思い奥さんに相談したら、アルコールを減らせ、一駅歩け、などとがみがみ叱られ、本人も本来の前向きな気持ちが萎えてしまう。セルフメディケーションどころか、まだ特に自覚症状もないし、「まあいっか」と結果に目をつぶってしまう。そして来年には恐ろしい結果をみることになるとは、まったく予想もしていないだろう。

「健康サポート薬局」「かかりつけ薬剤師」はご存知ですか?

 最近ではよく耳にする言葉であるが、セルフメディケーションと同じくわかっているようで、わからない不思議な言葉である。
健康サポート薬局は地域にあり、地域住民の健康を守るミッションだが、肝心の地域住民からさほど頼られていないのは、まだ認知度が足りないせいなのかもしれない。しかし先ほどの健康診断結果を謙虚に受け止め、生活改善を相談するにはもってこいの場所である。
 「検査結果の数字の意味」、「このまま放置する恐ろしさ」を、がみがみ叱るのではなく優しく説明してくれ、必要な運動や食事の指導を受けられる。薬局は処方箋がなくては入りにくいだの、OTCはドラッグストアが安いなどと言っていないで、健康相談結果をもって「相談にきました」と一度は行ってみて欲しい。
 薬局での指導で改善しない場合には受診勧奨といって医師の受診をすすめられる。医師が治療のために処方箋出したら、今度は処方箋をもって同じ健康サポート薬局に行こう。そこには「かかりつけ薬剤師」があなたの健康管理をしてくれる。現在飲んでいる薬すべての飲み合わせや、薬の副作用の兆しなどのチェックを任せよう。
 これは私が夢でみた「薬剤師のあるべき姿」である。今ある健康サポート薬局が、実際にどこまでやってくれるかはわからないが、少なくともこれからの薬剤師は、このミッションを達成しないと、国民から背をむけられるのは間違いない。
 しかし、理想は「かかりつけ薬剤師」のお世話になる前に、生活改善の指導で日々の健康管理ができることである。すなわち適度な運動、栄養バランスの良い食事、十分な睡眠時間を確保し、人が元から備わっている自然治癒力を高めることが大切である。
 天候不順や多忙な日々で体調を崩し、風邪や腹痛、軽いけがをしたら、OTC医薬品を上手に使い、自分で手当てするセルフメディケーションが役に立つ。
 私が幼いころ、家には「富山の薬箱」といって風邪薬や鎮痛剤が入った箱があり、お腹が調子悪いと母が「熊の胆」という苦い黒い薬を飲ませてくれた記憶がある。月に一度箱の中を調べ、使った薬を補充しにくるおじさんが必ず紙風船をくれた。紙風船がほしいから苦い薬も頑張って飲んだ。多分この時代はどの家庭にもあった薬箱である。これこそがセルフメディケーションである。

 参考資料 第一三共ヘルスケア 「くすりと健康の情報局」

このコーナーのトップへ
トップページへ

2020年01月 更新