2009年11月
学習のポイント
前回の「瀉下薬の適応と適量(その一)」では5つの課題を取り上げ、“瀉下薬の適応探し”の出発点となる非適応疾患の鑑別と機能性便秘の診断ポイント、瀉下薬の適正使用の基礎となる考え方について触れた。続く今回の「瀉下薬の適応と適量(その二)」では、2つの学習課題、1)瀉下薬の適量・選択基準、2)瀉下薬の効果に深いかかわりをもつ「生活療法の意義」、を学習のポイントとしている。学習課題その6:瀉下薬の適量・選択基準について
薬剤師F:瀉下薬の適量は、どのように見出せばよいのでしょうか?山岡先生:便秘とは違いますが、バリウム検査後のあとのラキソベン液の用量は、0〜60滴にばらついていました。また、瀉下薬の治療目的は、あくまでも自然排便を誘い出すためのものですので、配合成分の薬理学的特性等を良く考え、適量を見出す工夫が必要です。当然、食事・運動、排便習慣の確立、ストレス緩和療法の実践などが、大きく薬物療法の効果に影響してきます。
さて、お尋ねの「瀉下薬の適量」ですが、まず、医療用の瀉下薬の添付文書から、瀉下薬の種類別の用法・用量(用量幅)を製品の特徴との関係で見ておきましょう(表5-5)。
瀉下薬は至適用量の設定が難しいといわれます。瀉下薬の至適用量は糞便中の水分量を60〜80%の範囲にコントロールすることだという考え方があります。また、その便性の正常化をよびもどす至適用量を見出すことに失敗することが、瀉下薬の誤用・乱用につながることも確かです。
瀉下薬の至適用量を見出す方法は薬剤ごとに違います。至適用量を見出す評価法にしても、便の水分量だけに着目するのではなく、排便後の自覚症状の改善、服薬に伴う腹痛など、服薬者のQOLを総合的に評価しなければなりません。さらに重要なことに、瀉下薬への“慣れ現象”による瀉下薬への依存状態を回避するという大きな課題があります。
薬剤師F:瀉下薬の適量設定は、便性以外の要素を総合的に評価しなければならないということですが、「便秘のタイプ別の瀉下薬の選択基準」のようなものはあるのでしょうか?
山岡先生:はい、そのような基準が必用だと感じています。瀉下薬の適応となる過敏性腸症候群IBSについては、瀉下薬の使用基準となる治療ガイドラインがあります(4.4.回復期のフォローアップの留意点参照)。IBS治療ガイドラインでは、まず、食事指導・生活習慣改善を目標とし、便秘型IBSに高分子重合体(ポリカルボフィルカルシウムはOTC薬配合成分のプランタゴ・オバタで代替できる)、IBSの便通異常に乳酸菌製剤、腹痛に抗コリン作用薬、便秘症状に瀉下薬(下剤)の使用が上げられています(図5-7)1)。しかし、残念なことに、瀉下薬の選択基準についての詳細な記述は見られません。
さて、最後に、ご質問の「便秘のタイプ別の瀉下薬選択基準」のまとめに入りましょう。ここでは、機能性便秘の結腸性便秘、直腸性便秘、痙れん性便秘の3タイプについて、一般用瀉下薬の選択基準の考え方を示しておきます(表5-6)2)。
薬剤師F:一般用の瀉下薬について、どのような使い分けが必要でしょうか?
山岡先生:一般用の瀉下薬には、� グループA :軟便化薬(PO:プランタゴ・オバタ種子+センナ実配合剤)、� グループB :緩下薬(BSD:ビサコジル+ジオコチルソジウムスルホサクシネート・センノシドなど)、� グループC :緩下薬(SPS:ピコスルファートナトリウム水和物の製剤)、� グループD :塩類下剤:(酸化マグネシウム+カスカラサグラタエキス・センナ末など)のほかに、� グループE :生薬配合製剤(漢方処方薬の大黄甘草湯、大黄末・乳酸菌成分など)など、多彩な製品が出ています。瀉下薬は、一般用医薬品のリスク分類では、「第2類」または「第3類」に分けられていますが、皆様のところに相談に来られる方々にとっては、リスク分類によらず、いろいろな疑問・質問があるのではないでしょうか? それでは、主な一般用の瀉下薬の商品名、1回用量、適応(症状)などについてのまとめを紹介しておきましょう(表5-7)2)。
学習課題その7:常習性便秘の生活療法
薬剤師F:最後に、常習性便秘の生活療法とトクホの活用についても教えてください。山岡先生:“IBS治療ガイドライン”では、まず、食事指導・生活習慣改善を目標とするとしています1)。常習性便秘(結腸性便秘・直腸性便秘・痙れん性便秘)の生活療法を考えるには、その便秘症状の成り立ちを理解することが先決です。
常習性便秘の成り立ちは身体的要因と精神的要因に分けられます。身体的要因には�低残渣食(ていざんさしょく)(食物性線維が少ない食事)、�運動不足、�朝食摂取不足(学習課題その4:瀉下薬治療の最終目標を参照)が上げられます。精神的要因には、�生活習慣としての便意のこらえ、�よりソーシャルな要因となる精神的ストレスがあります。ここでは、ご質問のトクホとの関係から、身体的要因の1つ低残渣食のテーマに絞って、お答えしましょう。
薬剤師F:低残渣食は、線維の少ない食事と考えてよいのですか?
山岡先生:はい、そうです。食物線維には整腸作用、食後の中性脂肪上昇抑制作用、内臓脂肪の低減作用、ミネラル吸収促進作用などの機能が知られるようになりました。そのため、02年には日本食物繊維研究会がヒトの小腸内で消化・吸収され難く、消化管を介して健康の維持に役立つ生理作用を発現する食品成分をルメナコイド(Lumenacoids)と呼んでいます(図5-8)3)。また05年には、ルミナコイドの名称のもとに日本食物繊維学会が食品成分の新概念を明らかにしたことが紹介されています5)。さらに、09年7月には「ルミナコイドの保健機能と応用;シー・エム・シー出版」という書籍も世に出て、この新概念は広く世に認知されるようになりました。
次は食物線維の機能性について説明しましょう。食物線維は「特定保健用食品」(トクホ)の配合成分として利用され、「おなかの調子を整える食品(整腸)」と「コレステロールが高めの方の食品」を保健目的とする製品に配合されています。食物線維が多い食品を摂取することで、便量の増加、腸内(ちょうない)細菌(さいきん)叢(そう)の正常化に効果があることが、臨床研究によって確認されています。食習慣の是正とともに、特定保健用食品の摂取の有用性が評価されているのです(図5-9・図5-10)。
〔参考資料〕
1)小牧 元他:心身症 診断・治療ガイドライン,12-40.東京 協和企画,2006
2)宮田満男他:OTC薬とセルフメディケーション−症状からの適剤探し−p.105-124. 金原出版,2009
3)JFRLニュース:30.食物線維.2002.12.
4)倉沢新一:食物繊維の定義と分類.Kellogg‘s Update No.81.1-4,2005
5)清水俊雄:特定保健用食品の科学的根拠 p.31-32,2008(同文書院)
2)宮田満男他:OTC薬とセルフメディケーション−症状からの適剤探し−p.105-124. 金原出版,2009
3)JFRLニュース:30.食物線維.2002.12.
4)倉沢新一:食物繊維の定義と分類.Kellogg‘s Update No.81.1-4,2005
5)清水俊雄:特定保健用食品の科学的根拠 p.31-32,2008(同文書院)
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