2010年01月
学習のポイント
第6回・インフルエンザ2009(その二)では、4)新型インフルエンザの厚生労働省の取り組み、5)我が国の2010〜2011年における新型インフルエンザの発生状況、6)インフルエンザ2009に対する今後の方針、を学習ポイントとしている。学習課題 その4:新型インフルエンザの厚生労働省の取り組み
(薬剤師A):新型インフルエンザの呼称はインフルエンザ(H1N1)2009となり、新型インフルエンザから季節性インフルエンザの扱いになりましたが、その経緯を教えてください。多田先生 :これまでの経緯を振りかえりますと、まず、WHOが新型インフルエンザの発生を声明したことを受けて、厚労省大臣が感染症法に基づき平成21年4月28日に新型インフルエンザの発生を公表しています。次の段階では、WHOが平成22年8月10日に「ポストパンデミック声明」を明らかにしたことを受けて、厚労省は同年8月27日に新型インフルエンザ(A/N1H1)に対する取り組み姿勢を明確にしたと言えます(図6-5)。
(薬剤師):先生、新型インフルエンザから季節性インフルエンザに移行したと判断する基準はどのようなものなのでしょうか?
多田先生:その判断基準は、1)インフルエンザの原因ウイルスの動向、2)流行予測等のサーベイランス、3)その他の必要な調査の結果をみて、新型インフルエンザの特徴がなく、季節性インフルエンザへの変化が認められる場合、とされています。
学習課題 その5:我が国におけるインフルエンザの発生状況
(薬剤師F):我が国におけるインフルエンザの発生状況が知りたいのですが・・・。多田先生 :我が国の2010〜2011年における新型インフルエンザの発生状況を知ることで、なぜ、2011年4月1日から新型インフルエンザが季節性インフルエンザとして扱われるようになったかが良く理解できると思いますので、ご質問への答えは重要な情報になると思います。
それでは、表6-6をご覧ください。この表は、新型インフルエンザが季節性インフルエンザとして扱われる直前の2011年3月10日現在のまとめを示しています。今シーズン(2010〜2011年)、昨シーズン(2009〜2010年)、例年(過去10年)について、流行入り、ピーク、ウイルス型をみていますが、今シーズンの動向は、過去10年の傾向に近づいており、患者数も例年規模の中に収まり、新型インフルエンザが今シーズンで収束したことを示しています。
多田先生:過去10年の傾向で見ますと、インフルエンザの流行入りは11月下旬〜1月下旬(第47週〜第5週)、ピークは1月中旬〜3月中旬(第4週〜第11週)です。図6-6は2000年〜2011年にかけての1週間ごとのインフルエンザ発生動向を示しますが、昨シーズン(2009〜2010)は、他のどの年と比べても新型インフルエンザが特異的な発生動向を示しています。これに対して、今シーズン(2010〜2011)は、一転して鎮静化の方向に向かっていることが分りますネ。
薬剤師G :先生、図6-6を見ていますと、2009年度の週別のインフルエンザの発生動向は、顕著な二峰性を示していますね!
多田先生 :その通りです。2009年は二峰性、他の11年間の発生は2月に集中しています。
(薬剤師G):それから、先ほどから気になっていたのですが、今日の勉強会の最初のテーマ「インフルエンザ2009の臨床像」のお話の中で、ハイリスクの季節性インフルエンザ罹患者の具体的な内容(表6-2)を見てみますと、インフルエンザの医療では、年齢的要因と基礎疾患が予後の決定要因となると思えるのですが・・・。
多田先生 :はい、その通りです。インフルエンザ罹患者が、ご高齢で基礎疾患がある場合は、初診時のプライマリーケアに慎重な対応が必要になります。まずは、ご指摘の点をじっくり見ることにしましょう(表6-7)。

多田先生 :まず、ご指摘の年齢的要因を、インフルエンザ重症患者についてみてみますと、今シーズンと昨シーズンとでは、小児(0〜14歳)、成人(15〜64歳)、高齢者(65歳以上)の各年齢階級別の基礎疾患保有率が、それぞれ35〜38%、66〜69%、88〜90%の範囲に収まっています。これに対し重症患者に占める各年齢階級の昨シーズン/今シーズン比が、小児では2.1、成人が0.51、高齢者が0.38となっており、新型インフルエンザの第一波流行期の小児患者に特別な注意が必要なことが分ります。また、90%に基礎疾患がある高齢者は重症化のハイリスク患者であることにも十分な配慮が必要です。
学習課題 その6:インフルエンザ2009に対する今後の方針
(薬剤師F):先生、インフルエンザ2009に対する今後の方針をお聞きしたいのですが・・・。多田先生 :平成23年3月に厚労大臣から出された「新型インフルエンザに係る季節性インフルエンザ対策への移行について」の中に今後の対応が述べられています。内容は新型インフルエンザを通常のインフルエンザ対策に切り替えること、将来の新型インフルエンザへの対策の見直し、最後が季節性インフルエンザ対策の3つに分かれます(表6-8)。
(薬剤師H):サーベイランス体制の強化とは、具体的にどのようなことでしょうか?
多田先生 :一つはインフルエンザの発生動向〜医療従事者向けの疫学情報を頻繁に提供し、インフルエンザの発生に立ち向かってもらうというものです。もう1つはサーベイランスの中身の強化をはかるもので、1)重症化リスクの程度を入院患者で評価し、インフルエンザの本質を知る試み、2)インフルエンザの流行規模と傾向の把握、3)ウイルスの亜型の調査結果からインフルエンザの対策に迫っていくという内容になっています(図6-7)。
(薬剤師H):多田先生、インフルエンザ2009に対する今後の対策として、インフルエンザ対策の普及啓蒙とありますが、厚労省の考え方はどのようなものですか?
多田先生 :厚労省ホームページにインフルエンザの対策のページがあり、その中に「新型インフルエンザは、通常の季節性インフルエンザに変わりました」と題する資料があります。その資料の中には、皆様方のような地域の医薬関係者に参考になる貴重な情報がありますので、一度調べてみてください(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/index.html)。
(薬剤師H):具体的にはどのような資料がありますか?
多田先生 :資料は一般、自治体、医家に分かれていますが、OTC薬を扱う皆様方には、一般向けの資料が相談者への対応に役立つと思います。私がご紹介したかったのは、インフルエンザのQ&Aで、その内容は、インフルエンザ総論(6Q&A)、インフルエンザの予防・治療対策(9Q&A)から構成されています(表6-9)。
(薬剤師H):そのほかに、役立つ資料はありますか?
多田先生 :そうですね、同じQ&A形式で、「インフルエンザ1問1答」というツールがあります。10のQ&Aから成り立っており、かかりつけ医が診察室や待合室に置いて、勉強資料として患者さんにお持ち帰り頂く資料になっています。
(薬剤師H):H 10のQ&Aからいくつか紹介頂けますか?
多田先生 :そうですね、患者さんだけではなく、皆様にも重要度が高いQ&Aから2つだけ紹介しておきましょう。残りについては、皆様でお調べになり、役立てるよう工夫してください。
さて、最初に、Q&A1の風邪とインフルエンザの違いを取り上げましょう。皆様が薬局等の店頭で、風邪かインフルエンザか、また、インフルエンザについては受診勧奨の判断を迫られることが多いと思います。このQ&A1では、症状と流行の時期からの鑑別となっています。つまり、皆様方は、相談者の症状だけではなく、季節性インフルエンザの流行情報や家族・学校・会社等でのインフルエンザ流行情報がインフルエンザの判断に役立つことを忘れてはなりません(表6-10)。
多田先生 :さて、もう1つですが、Q&A6の「インフルエンザはどんな症状が出たら医療機関に行けばいいの?」を見ておきましょう。設問の答えを見ますと、診療機関へ行く目安に、1)38℃を超える急な発熱、2)咳・喉の痛み、3)全身倦怠感を上げ、こういった症状がある場合は、受診するよう求めています。さらに、症状による受診の必要性判断を小児と高齢者について示し、より実践的な参考資料になっています。
6)厚生労働省HP/インフルエンザの対策/新型インフルエンザに係る季節性インフルエンザ対策への移行について
7)厚生労働省HP/インフルエンザの対策/インフルエンザ入院サーベイランスについて
8)厚生労働省HP/インフルエンザの対策/新型インフルエンザは通常の季節性インフルエンザに変わりました、インフルエンザQ&A
9)厚生労働省HP/インフルエンザの対策/新型インフルエンザは、通常の季節性インフルエンザに変わりました、インフルエンザ1問1答
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