2010年01月
学習のポイント
第6回(その一)に続き、第6回・新型インフルエンザ(その二)では、まず、新型インフルエンザの治療関連情報として新型ウイルス対応ワクチンを取り上げた。次は新型インフルエンザ相談センターを取り上げ、薬局等における相談者への対応の重要参考情報とした。最後は、薬局等の現場を想定し、かかりつけ薬局薬剤師等のプライマリケアにおける留意点を学習ポイントとしている。<学習課題その4:新型ウイス対応ワクチン
薬剤師I:まず、「新型ウイルス対応ワクチンの供給状態」を教えてください。多田先生:新型インフルエンザのワクチンについて、元舛添厚生労働相は09年8月29日、「6000万人から7000万人分のワクチンは確保できると思う。安心してほしい」と述べ、海外からワクチンを輸入することで、国民のほぼ半数に接種できる見通しであることを明らかにしています。しかし、8月30日時点では、海外のワクチンは有効性と安全性の臨床試験を進めているところであり、9月の出荷を目標としていますが、不透明な部分が残されています。
薬剤師I:新型ウイルス対応ワクチンについて、「国内臨床試験」は実施しないのでしょうか?
多田先生:政府(元舛添厚労相)は海外から輸入する予定のワクチンについて、国内で治験を行わずに輸入できる「特例承認」の制度を初適用し対応する方針だとしていますが、国内ワクチンと製造法などが違うため、「何らかの治験をやらないといけないと思う」とも述べています。
薬剤師J:新型インフルエンザの「パンデミック・フェーズ」とはなんですか? また、フェーズにあわせて、ワクチンなどの対策がとられるのでしょうか?
多田先生:ご存知のように、WHOでは新型インフルエンザの世界的な大流行について、パンデミックという表現を使います。「パンデミック」とは、限られた期間に“ある感染症”が世界的に大流行することをいいます。WHOの発表によりますと、09年8月末現在のフェーズは5〜6の段階で、多くの感染者および死亡者を伴うと予想され、世界的な脅威になっています1)(図6-5)。

さて、2つ目の「ワクチン製造」についてですが、WHOは監督部局やその他の機関、インフルエンザワクチン製造業者とともに緊密な連携を図っています。ワクチン製造の方針については、ウイルスの疫学や罹患者の重症度などの重要項目の評価を行い、季節性インフルエンザと新型インフルエンザのワクチン製造について、慎重な対応をとろうとしています。
学習課題その5:新型インフルエンザ相談センター
薬剤師B:先生、東京都の「新型インフルエンザ相談センター」について教えてください。多田先生:都では、09年7月11日から受診医療機関が分からない人や自宅療養の人のために「新型インフルエンザ相談センター」をスタートさせています。相談センターでは、新型インフルエンザ診療を基礎疾患がない群、基礎疾患がある群、妊婦群に分け、基本的な診療の流れを定めています。ここで、まず、「基礎疾患のない群」、「基礎疾患がある群」の診療の流れをみておきましょう2)(図6-6・図6-7)

基礎疾患がない群の診療の流れについては、かかりつけ医がいる人といない人に分け、原則的に“かかりつけ医”または「発熱外来機能」をもった医療機関の受診を勧めています。
・かかりつけ医がいる人:かかりつけ医に電話→受診時間等の指示に従う。その医療機関での診療が困難である場合は、「発熱外来機能」がある医療機関の紹介を受け、そちらで受診する。
・かかりつけ医がいない人:発熱外来機能がある施設が分かっている人は、その施設を受診し、分からないときは発熱相談センターに相談し、発熱外来機能がある施設を紹介してもらう。

基礎疾患のある人の診療は、急な発熱などの症状が現れた場合、受診前にかかりつけ医に電話連絡し、診療をうけることが原則です。また、かかりつけ医は、必要に応じて、発熱外来機能をもった一般医療機関の紹介することが出来ます。
「基礎疾患の範囲」は慢性呼吸器疾患、慢性心疾患、糖尿病に代表される代謝性疾患、腎機能障害、免疫機能不全(ステロイド全身投与を含む)などを有している患者で、治療経過や管理状況などから医師が重症化のリスクが高いと判断した人とされています。
薬剤師B:先生、「発熱外来機能」とは何ですか?
多田先生:発熱患者とその他の患者について受診待ちの区域を分け、診療時間を分けるなどして、院内感染対策を強化した外来機能のことです。
薬剤師B:すると、「外来トリアージ」の機能と同じ意味になるのですか?
多田先生:その通りです。医療機関には診断前の感染症患者さんが来院することで、2次感染の危険性が高いわけです。そのため、感染症を疑った場合には、標準予防策、感染経路予防策を守って速やかに優先診療(トリアージ)することが、院内感染防止を図る上で重要になります。外来トリアージ対象疾患には、インフルエンザ(飛沫感染/空気・接触感染)のほかに結核、麻疹、水痘、風疹、ムンプス、感染性胃腸炎、重症急性呼吸器症候群(SARS)があります。
薬剤師B:保健調剤、薬局等の現場でも、外来トリアージの考え方が必要になるのでしょうか?
多田先生:そう思います。実際に北大病院で実施している「外来トリアージ」のフローチャートと院外処方調剤薬局への依頼内容を紹介しておきます3(図6-8・図6-9)。
薬剤師H:話が戻りますが、妊婦群の診療の流れは、どうなるのでしょう。
多田先生:「妊婦」について、産科医は新型インフルエンザの説明義務があり、妊婦は、あらかじめ、疑わしい症状が出た際の医療機関を決めておくことになります。妊婦に症状を認めた場合は、妊婦から妊婦への感染を極力避けるため、原則としてかかりつけ産科医療機関を直接受診することは避け、発熱外来機能がある一般医療機関に事前に電話をしてから受診することになります。


学習課題その6:薬局における新型インフルエンザのプライマリケア
薬剤師A:薬局等の店頭では、新型インフルエンザ、季節性インフルエンザ、一般感冒の相談者が同時期に訪れると思います。プライマリーケアの任務に当たる薬剤師等が、もっとも気をつけなければならない留意点について、ご意見を伺いたいのですが?多田先生:大きく2つに分けて考えましょう。最初は医療機関の受診判断です。受診を要するケースは、さらに3つに分けて対処してください。1つ目は新型インフルエンザを疑う臨床像が観察され、緊急に地方自治体が指定する診療機関への受診を勧めるケース(表6-1)、2つ目は発熱、咳嗽などの上気道の炎症状が重篤ではないものの、ハイリスクとなる持病のある方を見極めて、受診を勧めるケースです(表6-2)。最後、3つ目は、もともと健康な小児、成人で、いつになく呼吸が速い、呼吸が苦しいなどの自覚症状があるケースでは、緊急に受診を勧めてください4)(表6-6)。

2つ目は比較的症状が軽く、一般用のかぜ薬で養生できると判断できるケースに対する対応を考えなければなりません。この課題については、次の第7回「かぜ薬」に譲ることにしましょう。
〔参考資料〕
1)パンデミック(H1N1)情報2009、WHO更新情報(国立感染症研究所・09/5/3;IDSC更新)
2)厚生労働省:新型インフルエンザ対策関連情報:新型インフルエンザ対策運用指針/地域における対応www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04
3)北海道大学病院・外来トリアージwww2.huhp.hokudai.ac.jp/~ict-w/kansen/1209.pdf
4)厚生労働省:新型インフルエンザ対策関連情報/「インフルエンザかな」症状がある方々へ/新型インフルエンザになると重症になるのですか http://www-bm.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04
2)厚生労働省:新型インフルエンザ対策関連情報:新型インフルエンザ対策運用指針/地域における対応www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04
3)北海道大学病院・外来トリアージwww2.huhp.hokudai.ac.jp/~ict-w/kansen/1209.pdf
4)厚生労働省:新型インフルエンザ対策関連情報/「インフルエンザかな」症状がある方々へ/新型インフルエンザになると重症になるのですか http://www-bm.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04
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