セルフメディケーション税制
1. 花粉症などアレルギー症状
立春を過ぎるとそろそろ花粉が飛ぶ季節になります。多くの方がアレルギーが原因といわれる症状に苦しんでいます。病気とも思えない、でも症状はうっとうしい、医師にみてもらおうか、でも適確な原因や対応をいってくれるとも思われない、「処方せんをもらって薬局でもらった薬をのんだら確かに症状が軽くなったのは気のせいではない!!」と思うかもしれません。
薬局で「調剤されたくすり」はアレルギー症状を抑える作用がある成分を含有しています。同じ成分を含む「一般用薬」があり、処方せんなしで買うことができます。
花粉症が気になるみなさんは今どんな状態でしょうか。図をみてください。今まではあまり経験したことがないのに、何か鼻水が出る、目がかゆい、涙が出るといったかぜに似た症状があるという方がいます。(図の上部 経験なし→症状出現 のケース)
一方、花粉症といわれ過去に苦しんだ経験をもつ方も多いことでしょう。現に医療機関を受診されて処方せんによる薬を使っている方もいますね。(図の下部 経験あり→治療中 のケース)

1-1 内服か外用か
薬は使い方に内用薬(内服)、外用薬、注射薬の3つに分けられます。注射薬は速効性がありますが危険度も高いので医療用が主でOTC薬にはありません。内服はいったん身体内に入って徐々に効果がでてきます。外用は薬が直接当たる部位に作用するので効き目は早いですが、その部位から一部は体内に吸収されることも知っておいてください。
花粉症はアレルギーが原因とされ、外部から侵入する異物(花粉)に対する生体防御のメカニズムに狂いが生じ、過剰、あるいは過敏な反応が生じる状態をいいます。はなみず、くしゃみ、目のかゆみなどの症状は最終的にはヒスタミンの過剰分泌によることはかなり前にわかりましたので、抗ヒスタミン作用のある薬が使用されてきました。
ヒスタミンにはアレルギーに関連するH1と胃酸分泌に関連するH2という2つの受容体がありますが、H1と拮抗する作用を持つ薬が使われます。アレルギーのメカニズムが解るにつけ、その過程で仲介する化学伝達の遊離を抑える作用を持つ薬もあるので全ての花粉症の薬が一律ではありません。
炎症を起こしている現場で抑えるか、薬を身体内に入れてじっくりと抑制するかの考えが外用薬か内服薬かを選択する基準になります。成分の性質によって製剤化が可能か否かも関係しますので、種類が多くなっています。
1-2 成分や名前について―説明書の見方
医療用(処方せん)薬と一般用(スイッチOTC)薬と成分は同じと言いましたが、正確には有効成分が同じであって複数の有効成分を含む製剤では違う成分がある場合や製剤のための添加剤が違うことがあります。さらに、医療用と一般用とで有効成分の含量が違うものや一般用の製剤間で違うものがあります。
薬の説明書には法令により明示されていますが、複数の薬について全て正確に記憶することは薬剤師にも無理です。しかし、質問すれば直ぐに調べてアドバイスできます。誠意ある対応ができる薬剤師がいる薬局で購入することを勧めます。
一般薬の医薬品名は各製薬会社が販売名として登録しています。似た名前、例えば「ヨ−クキクA」と「ヨークキクAB」では成分が違うことがありますから、「ヨークキク」を買いたいといっても薬局は対応できないのです。処方せん薬名を「お薬手帳」などで正確に示して、同じ成分の「スイッチOTC(医薬品)」を使いたいと相談してください。
1-3 花粉症の鼻炎薬 内用薬(内服)
花粉症などにはアレルギー用薬を内服するように処方されているケースが多いと思います。処方薬の成分名を確認し、それに該当する「スイッチOTC(医薬品)」を選ぶのがいいでしょう。表1は医療用医薬品の成分名とそれに対応するスイッチOTC医薬品の販売名(商品名)です。医療用として10成分がありますが、8成分に内用のOTC薬が販売されています。
医療用は最初に新薬として承認発売された先発品の他に後発品(ジェネリック医薬品)が発売されているので、複数の品名があります。セチリジンはジルテックという先発品に後発品(ジェネリック)をあわせ39の品目が使用されています。先発品の名称は普及しているとはいえ、それは医療関係者の間のことで患者や健康者にとっては知らないことです。
ジェネリックはセチリジン塩酸塩錠〇〇〇という成分の一般名を入れていることが多いですが、別の名前もあります。処方されている医薬品名をしっかり確認してください。
対応するスイッチOTC医薬品もエバスチン、ペミロパストカリウムはそれぞれ1品目ですがエピナスチン、アゼラスチンには10品目以上があります。メキタジンは処方薬は全て単味製剤*ですが、スイッチOTC薬の単味製剤は表に掲載の2剤で他の製剤は別の成分を加えた複合剤です。「ポジナールM錠」はメキタジン製剤ですが他の「ポジナール〇〇」は成分が違います。* 単味製剤とは有効成分を1種のみ含有する製剤です。2種以上の場合は複合剤といいます。

1-4 花粉症の鼻炎薬 外用
(1) 点鼻薬
花粉症での悩みはくしゃみ、はなみず、はなのぐずつきなど鼻に関する不快感が多いので、鼻や目など炎症部位に直接作用する外用剤が単独または内服と併用されます。
鼻炎薬として噴霧製剤が汎用されています。医療用ではステロイド製剤とアレルギー用製剤に2分されます。ステロイドについては習慣性があると心配されますが、限局的に使用する限り危険性は低く、効果的です。医療用ではベクロメタゾンプロピオン酸エステルを使用した製剤が9剤ありますが、スイッチOTCに相当する一般用は5剤あり、すべて「季節性アレルギー専用」と明示されています。他の原因のアレルギーに使うことや常用はひかえてください。
アレルギー用成分の場合は症状をみて同じ成分のスイッチOTC医薬品を使用すれば同じ効果が得られます。医療用として過去に実績のあるケトチフェンとクロモグリク酸があり、それぞれに対し14、19のスイッチOTC製剤があります。
オキシメタゾリンには対応するスイッチOTC医薬品がありますが、ペミロラストカリウムのように医療用にはないのにスイッチOTC医薬品として鼻炎適用の製品が販売されています。


1-5 注意点と提言
(1) 注意する点
一般に抗ヒスタミン作用を有する成分は、眠気を伴う作用があります。眠気は仕事―特に車の運転や機械操作、受験勉強などにはマイナス、あるいは危険です。しかし、安静のためには好ましいという面もあります。税制控除の対象にならない成分に該当するものがあります。医療用で使用されている抗アレルギー成分が全てスイッチ化しているわけではないので該当するスイッチOTC薬がない場合があります。スイッチOTC成分についても一様ではないので自己判断にたよらず信頼できる薬剤師の説明をきいて判断してください。
(2) 改善への提言
表をみてあまりにも製剤数、販売名が多すぎることに気づくでしょう。複雑すぎて一般の方が適確にスイッチOTC薬を選ぶのに障害となっています。成分名を統一名とし、製造販売会社名は( )に記載するだけにして簡素化しませんか。
医療用として発売して原則8年の市販後調査期間が必要なことは理解します。期間終了後条件が整っていてもスイッチ化しない成分が多く存在します。理由はいろいろあるのでしょうが、一般の方には説明されていません。既得利益にこだわらず、国民の利便性と医療経費削減の視点でこの領域の一層のスイッチ化の促進を提言します。
注 スイッチOTC薬成分と品目については厚労省発表のセルフメディケーション税制対象成文名、品目一覧を参考としています。対応する医療用成分と製品については日本医薬品情報センター(JAPIC)の公開データを使用しています。スイッチOTC医薬品の適用等については同センターの一般用医薬品添付文書情報をもとにしています。参考資料について該当品目数等が一致しないことがあり、製品が未発売のものがあります。問合せなど行っていますが不明な点もあることをお断りしておきます。
2017年03月 更新