セルフメディケーション税制
3. 痛みの症状

 今回は痛みを和らげる鎮痛・消炎剤について解説いたします。「痛み」あるいは「疼痛」は身体の組織に傷害が起きて、それが不快と神経を通じて脳が認識することです。

 といっても実は非常に複雑で、原因、評価法など研究されていますが、まだ解明されていないことも多くあります。片頭痛は血管の収縮、拡張に伴って起きるとされています。また、痛みの客観的な評価法は難しく、心因的な面もあると言われています。

 ここではあまり深く追求しないで、日常に起きる痛みに対してセルフメディケーションとしてどんな対応をすればよいかについて説明していきます。

 痛みの原因が推定できればそれを排除し、治療することが大事です。怪我などによる傷は止血や消毒が第一なことは皆さんわかっていて手当されて処置しています。しかし、歯痛や腰痛については、想い到ることはあっても痛み止めで治まればそのまま過ごしていることはないですか。大事につながりかねませんから注意してください。

 痛みを抑えることを鎮痛と言い神経を遮断する外科的方法もありますが、薬による薬物療法が古くから行われてきました。民間療法を含め漢方薬、神経ブロックに使う薬物、抗精神薬、さらに麻薬性鎮痛薬などさまざまですがこれらは医師など専門職の領域でセルフメディーションの対象から外れます。

 痛みは熱感(発熱)と炎症(腫れ、むくみ)を伴うことが多く、鎮痛解熱薬、抗炎症薬などと一括して呼ばれることがあります。リウマチはこの3つの症状が合わさる典型的な疾患でステロイドが著効しますが、依存性などがあり継続的に使うのが難しいのです。

 長年にわたる医薬品開発の結果ステロイドに匹敵し、その欠点を補う薬物が登場しました。非ステロイド性抗炎症薬(Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs)という一連の薬物ですが、NSAIDs(エヌセイズ)と呼ぶので覚えてください。

 前回のかぜ薬の中にNSAIDsのイブプロフェンが配合されていると述べました。今回の鎮痛消炎薬ではイブプロフェンとロキソプロフェンがスイッチOTC薬として表示されています。またこの薬剤は経皮吸収が良好なので局所使用も可能です。
3-1 鎮痛を目的とした内用薬
 表1 痛みと関連する症状の緩和を目的としたスイッチ化された成分
注1 αに該当する成分はスイッチ化された鎮咳去痰薬や解熱薬などです。前回のかぜ薬の項を参照してください。
別項で説明は次回以後の皮膚などの炎症の項他で説明します。
効能効果の記載は概要で詳しくは添付文書または説明書を参照してください。
:注射 :内用 :外用(軟膏、クリーム、液、貼付など) :坐薬
 スイッチOTC薬としてブチルスコポラミンイブプロフェンロキソプロフェンの3成分があります。ブチルスコポラミンは鎮痙薬と呼ばれ、痛みといってもお腹のさしこんでくるような痛みに使う薬です。医療用ではブスコパン注とし緊急時の注射薬の他、内用も発売されています。一般用として6製剤が販売されていて1剤の含量は医療用と同じです。ただし、1日の限度は30mg(3錠またはカプセル)までと医療用より厳しい制限がありますので注意してください。なお、イブプロフェンとの合剤が1製剤あり、適用が生理痛となっています。

 イブプロフェンは単味として解熱鎮痛薬として販売されている製剤が17あります。イブプロフェンにエテンザミド、無水カフェインなどを配合した解熱鎮痛薬も多く53製剤あり、頭痛、生理痛、歯痛などに効くとしています。イブプロフェンに鎮咳去痰成分を配合したものはかぜ薬として販売されていて調査では55あります。イブプロフェンの含量はほとんどの製品で1日量として400mgか450mgで目的での違いはありません。注意して頂きたいのは1錠または1カプセルの含量に違いがあり、1回量が150mgのものは1日3回まで、1回量200mgのものは1日2回までとされています。説明書に書いてあるのは当然ですが、一般の方が確実に理解できるでしょうか。薬を買った際、飲み方を説明し確認する薬剤師がいる堅実な薬局を選ぶよう心掛けてください。

 ロキソプロフェンは比較的新しくスイッチ化されたNSAIDsです。そのため第砧爐泙燭詫彁惻薬品に指定されていますが、制度上の措置によるもので特別に危険度が高いということではありません。イブプロフェンは解熱、鎮痛、抗炎症作用が均衡したよい薬剤ですが、ロキソプロフェンはそれを上回る国産の世界に通じる医薬品として評価されています。現在単味のみで解熱鎮痛薬の内用として12製剤が販売されています。腰痛や筋肉痛には後にのべる外用薬を優先し、それを補う意味で内服を慎重に併用するとよいでしょう。

3-2 鎮痛を目的とした外用薬
 一般にNSAIDsには好ましくない作用として消化性潰瘍形成作用があります。開発にあたって動物実験を経て臨床試験を通じて安全性の高いものが医薬品として承認されていますが、注意は必要です。鎮痛効果は優れているが副作用が懸念される成分は、局所的に使うことです。皮膚からの吸収がよいので、腰痛や筋肉痛など痛みの部位に直接軟膏、クリーム、液剤、貼付(シップ、テープ)、さらにスプレーなど多彩な製剤があります。インドメタシンジクロフェナクフェルビナクが代表的なものです。

 表に示すようにインドメタシンは医療用では注射1、内用3の他坐剤6、軟膏8、液剤2、貼付22の製剤がありますが、スイッチOTCとして注射は当然ですが、内用や坐剤もありません。スプレーや液剤などスポーツの後などで使いやすい剤型があり、軟膏類は57、貼付類は107も製剤があります。貼付類は基剤の材質や接着剤によって粘着度とはがれやすさに差があり、またかぶれなどが生じます。基剤の性質は使う人により選択基準が違うので実際に使って評価して頂くしかありません。

 外用剤は濃度と使用量の問題があります。インドメタシンについていえば医療用は濃度1%ですが、一般用は濃度に差があります。0.5%~1%が多いですが3.5%の製剤があります。濃度が高い方が効くといっても副作用についても考えてください。また、シップやブラスターは皮膚に貼るので大きさと時間が関係します。部位や状況によりますので、きちんと聞いて適切な指導をしてくれる薬局を選んでください。貼付剤には温感と冷感の2タイプがあります。前者はトウガラシチンキ、後者はメントール(ハッカ)を添加しています。どちらも刺激して血流の促進による炎症改善の効果があります。好みによる選択で構いませんが、知っておいてください。

 ジクロフェナクは特に解熱作用が優れていて、医療用として乳幼児の高熱に対し「ボルタレンサポ」の名称の坐剤が定番となっています。発熱がある症状では選択するとよいでしょう。表に示すように内用の他、直腸注、貼付などジェネリックを含め総計65製剤が医療用として使用されています。スイッチOTCは軟膏・液剤が44、貼付類が30と豊富です。貼付類に関する基剤の影響はインドメタシンと同様と考えてください。

 フェルビナクも医療用として汎用されている外用鎮痛消炎剤です。パップとテープの貼付型、軟膏やローション、さらに液剤をスチックにして塗りやすい剤型としたものなど24製剤があります。スイッチ化され剤型も貼付、軟膏、ローション、スチックなど171種の製剤が販売されています。この製剤も剤型、濃度、使用量(貼付剤では大きさ)によって差が出ます。一般用に「〇〇〇フェルビナク70」という製品がありますが、70とはこの製剤が医療用と同じ濃度で1枚あたりフェルビナク70mgの成分を含有するという意味と推察しますが、難しいですね。他の製品名には付されていませんし、説明書を読んでもわかるとは思いません。痛みの状況と製品の種別について薬局で相談することを勧めます。

 外用としてのスイッチ化されたNSAIDsは他にピロキシカムプラノプロフェンケトプロフェンがあります。ピロキシカムは医療用では内用、坐剤、軟膏など7製剤あり鎮痛・消炎を適用としています。スイッチ化されているのは液剤とこれをスチック型にした3製剤で他の剤型はありません。

 プラノプロフェンは抗炎症効果が強く、医療用ではニフランという名称で鎮痛・解熱・抗炎症が適用とされていますが、点眼薬として多く使われています。スイッチ化も単味またはクロモグリク酸との合剤が13製剤あります。(別項で述べます)

 ケトプロフェンは医療用として46の製剤がありますが、筋注1剤を除き他は全て貼付を主とする外用剤で、「モーラスの銘柄は医薬品販売高の上位を占めています。しかし、スイッチ化は意外にもパップ剤1製品のみです。基剤については先に述べたことが同様にいえますが、成分、含量に違いはありません。

 内用に使用されるNSAIDsのスイッチOTCのイブプロフェンには外用はありませんが誘導体のイブプロフェンピコノールは医療用では5%の軟膏、クリームが湿疹などに皮膚科領域で使用されています。スイッチ化されて3%のクリーム、ローションなどの製剤が「にきび・吹き出物」の薬として販売されています(5の皮膚の炎症で説明)。

 アルミノプロフェンも抗炎症作用を有するNSAIDSで、現在医療用で使われていませんが、一般用内用薬が1製剤ありスイッチOTC薬です(図には掲載していません)。

 ポリエチレンスルホン酸は古い薬で1987年にスイッチ化されましたが現在は医療用としてはありません。血行促進作用があり、外傷やしもやけなどの患部に使う一般用製剤が1剤あります(図には掲載していません)。

 ロキソプロフェンは内用と外用がスイッチ化されています。医療用の外用剤は貼付が42、ゲルが4種ありますが開発した企業の「ロキソニン」の名称が浸透しています。スイッチOTCとして同企業関連の同じ名称の貼付、ゲル製剤を主に4剤が販売されています。医療用と一般用の規格に違いはないのですが、テープ剤の濃度に2規格があります。ゲルは塗る量を加減できますが、テープは貼るとほぼ全量が吸収されます。テープの大きさだけでなく、濃度について確かめてください。内用のところでも触れましたが最近スイッチ化されたため法令により要指示医薬品に指定されていますが、危険度が高いという意味ではありません。薬剤師が販売にあたり丁寧に説明することを義務づけているということです。

3-3 注意点と提言
(1) 注意する点

 痛みは身体になにか異変が生じていることを知らせる警報です。警報を察知して原因を究明し、対策を講じるのが基本です。しかし、不快感をまず除きたいのは当然ですから痛みに伴う発熱、炎症をまとめて緩和する薬剤として鎮痛・解熱・消炎剤を使うのは合理性があります。各項で警告したように痛みが治まったことは原因の究明や治癒と必ずしも一致しないことを知っておいてください。また、心因性も含め難しい疾患が内在していることもありますので、特に持続する痛みの場合は専門医の診断を勧めます。

 スポーツの後の筋肉痛などの場合は外用剤を選択し、耐えられない場合に内用薬を補助的に使うことにしてください。前後の体操やマッサージによって薬物を極力使わない練習法をコーチと相談して実行しましょう。

(2) 提言

 読んで頂いた方はおわかりと思いますが、スイッチOTC薬を使いましょうと言われても、あまりにも多すぎます。自由競争だから規制は無理といわれてきましたが、主成分は同じ、添加物がさまざま、名称が違う医薬品を一般市民が判別して購入するのは無理です。調査してみると公表資料に記載されていても医薬品情報資料にない、企業に問合せても発売中止、発売予定なしといった製品が複数あります。記載した数字は実態と違うことがあります。外用剤の中には成分が同じで規格、名称の異なる複数の製剤が医療用として汎用されています。同成分のスイッチOTCはわずか1剤です。医療用として保険適用がある以上、この製剤をセルフメディケーションで購入する奇特な人は限られます。医療資源の有効活用と公平性の観点から、安全性が保障され、自己判断で使用を決められる医薬品を速やかに保険適用から外し、購入経費を減税対象とすることを提言します。

一般の皆様へ:成分名や効能・効果について不明な点は薬局の薬剤師におたずねください。

薬局・薬剤師の方へ:患者、一般の方からの個別の商品名や配合成分についてのお尋ねは、医薬品集などで検索しお答えください。当協議会会員の薬剤師の方へはスイッチ化成分を含む製品について情報提供いたしますので事務局へご連絡ください。

2017年04月 更新