セルフメディケーション税制
5. 皮膚などの炎症

 身体の表面は皮膚で覆われ、体の形を維持し、内部に不都合なものの侵入を防いでいます。熱・紫外線のほか物理的・化学的に危害となるものは数えきれないほど多く、炎症の外因となるものも少なくありません。アレルギー性皮膚炎が起きれば、その原因を除き、炎症症状の回復を待つのが対処の基本ですが、その原因が判るとは限りません。

 皮膚の炎症に対応する薬剤は、痛みや炎症を緩和する(対症療法)薬剤と感染防御・治療(原因療法)を目的とする薬剤に大別できます。前者では事故、災害などで損傷が大きい場合は救急対応が必要です。後者では感染の程度や進行の状態を把握し、ひどい場合は医療機関の受診が必要です。

 しかし、日常に起きる小さなけがややけど、肌あれ、季節性の虫刺されやみずむし、おりものなどにはセルフメディケーションの知識を活用することが役立ちます。医療機関から離れた場所、夜間や休日に起きた場合など応急措置が悪化を防ぎ、回復に貢献しますから基本的なことを知っておいてください。特に小児、幼児がいらっしゃる家庭では救急箱を用意することをお勧めします。

 ここでは主に外用薬として皮膚疾患に使用するOTC薬の中で医療用でも使用している成分を中心に解説します。
5-1 真菌が起こす炎症と薬剤
(1) みずむし、たむし(皮膚糸状菌症)の薬

表1 みずむし・たむしの治療を目的としたスイッチOTC薬成分
 夏季を迎えるとみずむしに悩む方が多いことと思います。みずむしは真菌に属する皮膚糸状菌(白癬菌など)が皮膚の角質層に寄生して生じます。皮膚糸状菌は空中どこにでもいる、なっとう、みそ、しょうゆ、酒など醗酵食品を作る真菌(かび)の仲間です。いったん感染すると、増殖が皮膚の新陳代謝より早いため、清潔にするだけでは治癒するのは困難で抗真菌作用を有する薬剤の使用が必要です。

 医療用ではa) 白癬・カンジダ症薬、b) 白癬用薬に分けられますが、どちらも化学構造からアゾール系に分類される抗真菌剤が注射、内用、外用で使用されています。角質深部に感染する菌には皮膚への局所使用のみでは薬剤が浸透しにくいため医療の現場では注射と内服の併用で根治を目指すことがあります。OTC薬としては、足の裏や指間の患部に外用薬として直接塗布するか、噴霧するものが一般的です。「みずむし、たむし用薬と表示されています。OTC薬には注射や内用はありません。

 クロトリマゾールは古くから「エンペシド」の名前で医療用として使われ、白癬菌やカンジダ治療用として使われてきました。現在同成分を含む9製剤がOTC薬として販売されていますが、今回の税制控除対象にはなりません。対象となるのは次節でのべる膣炎対象の製剤が該当します。

 ミコナゾールは医療用では「フロリード」の名前で汎用されていますが、スイッチ化され、調査では現在みずむし、たむしなどに外用OTC薬が26製剤あり、リスク分類では兇任后

 ビホナゾールも外用みずむし薬として長い歴史があり、スイッチ化も早く現在市販OTC薬として47製剤あります。

 オキシコナゾールは医療用として1剤あり、スイッチ化され2製剤がOTC薬で販売されています。

 ラノコナゾールは比較的新しいスイッチOTC薬で税制控除対象として6製剤と公表されていますが、実際の市販OTC製剤と一致しない点があります。

 エコナゾールは1988年のスイッチ化OTC薬で4製剤ありますが、この成分の医療用は現在ありません。これらの製剤はすべて外用、リスク分類は兇任

 同様の薬効を有し、化学構造が異なる薬剤としてアモロルフィンテルビナフィンブテナフィンシクロピロクスオラミンがありいずれもスイッチ化されています。シクロピロクスオラミン以外は医療用として使用されています。

 テルビナフィンは内用もあり、「ラミシール」の名で知られています。OTC薬は外用のみですが、医療用と同名の製剤を含め公表で84、調査では72製剤が市販されておりみずむしの薬の主流といえます。

 ブテナフィンは医療用で白癬に対しての効果が認められ、同時期にスイッチ化され現在71製剤がOTC薬として市販されています。

 アモロルフィンは医療用が1製剤、スイッチ化されたOTC薬は2剤あり、シクロピロクスオラミンはOTC薬のみで2製剤があり、白癬菌によるみずむし薬を適用としています。

(2) 膣炎の薬 表2 膣炎症の再発時に使用するスイッチOTC薬成分
 女性の方を悩ます疾患に膣炎と関連する外陰部の皮膚炎があります。原因は外傷、異物、薬剤によるなど様々で女性ホルモンの減少も影響するといわれていますが、最も多い原因は感染です。感染の起炎菌は原虫(トリコモナス)、大腸菌など細菌類、そして真菌類です。真菌類は前節の白癬菌、カンジダと共通しますので抗真菌薬が適用となります。原因を突き止めそれに効果のある薬を使うことです。

 ミコナゾールは医療用として注射、内用、膣坐薬、外用があり「フロリード」の名称で知られています。膣坐薬、外用が各4製剤スイッチOTC薬として販売されています。ミコナゾールの医療用は「カンジダに起因する膣炎および外陰膣炎」が適応とされています。白癬菌やグラム陽性菌には効果がありますがグラム陰性菌には無効です。症状が類似していても原因菌が違えば効きません。

 膣坐薬の説明書に「腟カンジダの再発(過去に医師の診断・治療を受けた方に限る)」
 外用薬の説明書に「腟カンジダの再発による、発疹を伴う外陰部のかゆみ(過去に医師の診断・治療を受けた方に限る)ただし、腟症状(おりもの、熱感等)を伴う場合は、必ず腟剤(腟に挿入する薬)を併用してください」
と記載されています。症状の発現がはじめての方は婦人科(女性クリニック)の医師の診断を受けてください。再発時にも自己判断を避け、きちんと説明してアドバイスをする薬局を選んで相談してください。膣坐薬、外用薬がすべてリスク分類気了慊蠅砲覆辰討い詬由です。

 イソコナゾールもほぼ同じ作用を有する抗真菌薬で医療用では膣坐薬2、外用1製剤が使用されています。外用の適応としてミコナゾールと同様に外陰カンジダ症が記載されています。スイッチ化され膣坐薬2、外用薬1のOTC薬がありリスク分類気農農控除対象です。

 クロトリマゾールは医療用にカンジダ膣炎を適応とした膣剤が2製剤あり、同量を含有するOTC薬が1製剤あります。「∆∆∆∆」と医療用に準じた名前ですが外用錠剤であることを確認してください。この1剤のみがスイッチOTC薬で他のクロトリマゾール成分含有のOTC薬は税制控除対象になりません。

 オキシコナゾールも医療用として膣坐薬2、外用1が使用されていますが、スイッチ化され膣坐薬2製剤がOTC薬として販売されています。表示やリスク分類気脇瑛佑任后3依冖瑤呂澆困爐渓瑤燃葦部炎症の適用はありません。

 クロトリマゾールとオキシコナゾールを含有する医療用外用薬の添付文書には外陰カンジダ症の記載がありません。まったく効かないという意味ではありませんが2成分を含むスイッチOTC外用薬はみずむしなどが主な適応です。

 他のアゾール系抗真菌剤のエコナゾール、ビホナゾール、ラノコナゾールは膣炎関連のOTC薬はありません。また、アモロルフィン、テルビナフィン、ブテナフィン、シクロピロクスオラミンも膣炎を適応疾患とするOTC薬はありません。

5-2 その他の皮膚疾患と対応する薬剤
表3 湿疹、かぶれ、虫さされ などの皮膚炎症に対するスイッチOTC薬成分
(1) 湿疹と皮膚炎

 皮膚に関するトラブルは他にもたくさんあります。原因も広範囲にわたり、難治性の疾患もあるので全てセルフメディケーションで対処しましょうとは言えない悩ましい問題があります。それでも日常によく起きる炎症に基本的な対処法を心得ていると安心できます。

 湿疹と皮膚炎はほぼ同じ症状がみられますが原因は、接触して起きるかぶれ、アトピー性と呼ぶ内因性のもの、にきびなど皮脂の過剰による脂漏性のもの、逆に皮脂不足による乾皮症、その他と様々です。患部が肥厚する、赤くなる、熱感、さらに痛みやかゆみなどが共通しますが一様ではありません。

 「にきびは脂漏性皮膚炎のひとつで、医療用としてイブプロフェンピコノールが使われていますが、スイッチ化され現在12製剤がOTC薬として市販されています。医療用は5%製剤ですが、OTC薬は3%です。OTCの説明書には適応を「にきび・吹き出物」としていますが、脂漏性皮膚炎以外の湿疹、アトピー性湿疹などにも効果が期待できます。説明書には洗顔などについて有益な指示が記されていますので参考になります。

 湿疹、かぶれ、あせもなどにウフェナマートが広く使われています。医療用もありますが、1991年にスイッチ化されて以来皮膚炎症のOTC薬として定着しています。おむつかぶれなど常用する場合には非ステロイドであることはいいと思います。現在25の製剤がありますが、多くの製剤は抗ヒスタミン薬や局麻作用を有するリドカインを配合しています。配合成分については薬局で確認して使うことをおすすめします。

(2) 炎症とステロイド剤の効能

 副腎皮質ホルモンのステロイドは抗炎症作用があることについてはご存じと思います。一方でステロイドは怖いとか使わない方がいいとかという風評もかなりいきわたっているように思えます。ステロイドが効くこと、安易に使い続けているといざという際に効果がでないという危険があることは事実です。皮膚科の専門医は熟知して状況を判断して処方をしています。

 ステロイド薬の種類は多いですが、今回の税制控除対象になるスイッチOTC薬はヒドロコルチゾン酪酸エステルプレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル*1ベクロメタゾンプロピオン酸エステルの3成分です。ベクロメタゾンプロピオン酸エステルは2010年季節性アレルギー性点鼻薬としてスイッチ化されたもので皮膚炎症に対しては前2者です。

 ヒドロコルチゾン酪酸エステルは医療用に2製剤、OTC薬は10製剤あります。プレドニゾロン吉草酸エステルは医療用に4製剤あり、OTC薬は公表で199製剤、当会の調査では単味、配合剤合わせ173製剤という多数が市販されています。注意しなければならないのは医療用とOTC薬で濃度が違うことです。ヒドロコルチゾン酪酸エステルは医療用0.1%、OTC薬は単味、配合剤とも0.05%です。プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステルは医療用0.3%、OTC薬は配合剤が圧倒的に多いですが単味も含め全て0.15%です。OTC薬の濃度が医療用の半分なのは依存性を考慮してと思いますが説明がほしいところです。

 なおスイッチ化したステロイドとして2009年にデキサメタゾンがあります。医療用として注射、内用の他眼科、耳鼻科の領域で汎用されていて皮膚科における外用剤もあります。

 調査してみると外用剤を主に70製剤がOTC薬として現在販売中ですが、今回の公表リストには成分も該当する医薬品名も記載されていません。理由はわかりません。

*1 公表リストにはプレドニゾロン吉草酸エステルと記載されています。

(3) ウイルスに起因する疾患

表4 ヘルペスなどウイルス感染症の再発治療のスイッチOTC薬成分
 ヘルペスウイルスの中でヒトを宿主とするものが単純ヘルペス、水痘・帯状疱疹などがあります。水痘などに初感染したあと症状が治まった後、このウイルスは細胞組織に生涯にわたって潜伏感染し、宿主がなんらかの原因によって免疫機能が低下すると、再活性化します。このウイルスは神経系や口唇近辺の細胞組織を好むので症状が顕れ、かゆみや痛みを呈します。

 抗ウイルス薬としてはアシクロビルビダラビンがあり、両成分とも外用剤はスイッチ化されています。ただし、医療用は注射、内用を主にヘルペス感染の治療に重点を置いていますが、OTC薬は「口唇ヘルペスの再発(過去に医師の診断、治療を受けた方に限る)」と制限が設けられています。医療用ではビダラビンは単純疱疹と帯状疱疹を適応としていますが、アシクロビルは単純疱疹のみです。

 OTC薬は口唇ヘルペスの再発と記載されていますが濃度も医療用と同じですから帯状疱疹の起因ウイルスによる感染の顕在時にも効果を期待できます。激しい痛みが連続する場合は医療機関の受診が必要ですが、日常の体調不良時に起きる水泡や膿疱にはスイッチOTC薬を活用して対処するのをすすめます。

(4) 虫刺されに対する処置とOTC薬

 有害昆虫による被害は意外に多く、深刻な問題が内在しています。夏季になると野外でのイベントも多くなり、学校行事やキャンプでの虫さされや植物との接触によるかぶれの事故が急増します。基本的には接触を防ぐため、被服で保護することですが暑い季節に無理な注文でしょう。基本的な処置と対応を述べます。 

 刺された、または噛まれたとわかったならばその部位を水で洗います。水道水でいいのですが、谷川の水でも流水なら可です。洗浄と冷却が目的です。洗剤、布やブラシは使ってはいけません。部位がどんどん腫れる、熱くなる、赤黒くなる場合は危険度が高いので救急要請します。

 濡れた患部をティッシュ―ペーパーで水分を吸収し、ステロイド軟膏を塗ります。(2)に記載したヒドロコルチゾン酪酸エステルまたはプレドニゾロン吉草酸エステルがスイッチOTCとして使用できます。両成分を含有する外用剤の適用に「虫さされが記載されています。税制控除対象ではありませんが、OTC薬でデキサメタゾンを含有する外用薬は多数あります。かゆみを抑える抗ヒスタミン薬や、局所麻痺作用のリドカインを配合しているので「虫さされ」には効果があります。これらの薬は速効性を期待するので野外活動の際には予備携帯することを勧めます。

 昆虫毒については一般的には上記の措置で1~3日で軽快しますが、症状が改善されないまたは悪化する場合は医療機関を受診しましょう。チャドクガやアオバアリガタハネカクシなど特殊な毒素を持つ昆虫やマダニ、イエダニなどによる咬症は毒素や免疫機構、また蚊の媒介によるデング熱、ジカ熱感染など問題はつきないのですが連載の範囲を逸脱するのでそれぞれの成書を参考にしてください。

5-3 疑問点と提言
 皮膚の炎症は範囲が非常に広いという特徴があります。疾患の多くは、誰よりも本人自身自覚しています。症状の経過は自覚していてもその症状が他人と比較してどうなのかはわかりません。原因が多岐なため同じ症状とはいえ他人の原因と同じかは分かりません。原因の究明は疾患部位の皮膚サンプル採取、培養し同定する作業を経なければなりません。

 真菌やヘルペスウイルスによる感染は専門医療機関を受診しても完全に除去することが難しいので、体調によって再発した際に有効な外用剤で症状を抑えることは合理的です。しかし、夥しい多数の該当薬剤を税制対象か否かで区分するのは無理です。ステロイド剤の扱いについても説明できません。

 軽い炎症に使用するOTC薬としてステロイドは速効性がありますが、税制控除対象の線引きが不明な点があります。他剤との配合、濃度、適応について薬局で明確に説明できるように整理する必要があります。ステロイド剤を医療用として残すのは妥当ですが、ウフェナマートをOTC薬として保険薬価から削除することを提案します。

 膣炎の抗真菌薬の使用に関しては、受診や再発時の利用について明確に指示があり、忙しい年代の女性の方には有益と思います。購入時に利用者の立場を配慮し、的確なアドバイスができる薬局が増えることを期待します。

 一方、同じ抗真菌薬でもみずむし、たむしなどへの適応についてはもう少し丁寧な説明が必要と思います。スイッチ化OTC薬で9成分、200を超える製剤(商品)がありますが、効能・効果は「みずむし、いんきんたむし、ぜにたむし」と一律、注意書きも一律、顧客からしてみれば「治らないときはどうすればいいの?」という懸念が生じるでしょう。述べたように起因している真菌の種類によって効かないことがあります。せめて、「効き目について疑問が生じた場合は購入した薬局で相談してください」と踏み込めないですか。OTC薬を使う普通の人の立場で考えてください。皮膚のトラブルは顧客の気持ちを思い、親身にアドバイスすることで薬剤師の実力が試されます。

 ヘルペス感染についても同様のことがいえます。スイッチOTC薬は口唇ヘルペスの再発に限局していますが、再発症状は他の部位にも生じます。健康サポート薬局をキイステーションとして薬剤師が相談に応じることを条件に適応を拡大することを提言します。

 今回の対象領域が広いこともあり、スイッチ化OTC薬を医療費控除の特例として税制控除の対象とするという説明は説得力に欠けます。 エキサラミド、トルクシラート、チオコナゾール、スルコナゾール、ネチコナゾール塩酸塩はいずれもスイッチ化された成分ですが公表リストにありません。スルコナゾールとネチコナゾール塩酸塩は医療用として現在使用されていますが、前3者はありません。実際に5成分はOTC薬として販売されていません。エコナゾールのように医療用がなく、OTC薬のみのものがあります。今回の税制控除の主旨からは説明できません。

一般の皆様へ:皮膚関連の症状は範囲が広いことと、実際の体験が本人で客観的評価が難しいことが特徴です。症状からみると税制控除対象となる薬の適用が限定されている印象が強いのではないでしょうか。
 スイッチOTC薬以外の成分が多いため、全般については成書などを参考にしてください。成分名や効能・効果について不明な点は薬局の薬剤師におたずねください。

薬局・薬剤師の方へ:症状を患者(顧客)の話す内容から客観的事実を集約し、最新の医薬品情報とマッチングする。次いでスイッチOTCを含めた一般用医薬品の推奨か皮膚科専門医へ受診勧奨かを決断してアドバイスする薬剤師冥利につきる分野です。基本は顧客の思いを共有することにつきます。
 患者、一般の方からの個別の商品名や配合成分についてのおたずねは、医薬品集などで検索しお答えください。当協議会会員の薬剤師の方へはスイッチ化成分を含む製品について情報提供いたしますので事務局へご連絡ください。

2017年05月 更新