セルフメディケーション税制
6. その他の疾病に使えるスィッチOTC薬

 セルフメディケーションの実践としてスイッチOTC薬を使用して身体の不具合に対処することについて述べてきました。皆さんの立場―年齢、家族構成、地域環境、職業などによって、さらに現在の健康状態により受け取り方や考え方が違うと思います。しかし、意外に利用できる範囲は広いと思われた方も多いのではないでしょうか。
 5章までに解説した症状やそれに対応するスイッチOTC薬は誰もが経験するいわばメジャーなものですが、身体の不調は多種多様です。全てを述べることはとてもできませんが、対応するOTC薬の中で今回の税制控除の対象となるスイッチOTC薬を主に説明します。 ただし、調査してみると不明なことも続出しました。税制控除対象の線引きがあいまいなことや医療用として使用していない―適切な表現といえないですが、「過去の薬」があります。さらに医薬部外品やサプリメントとして販売されているものがあります。逆にリスク分類が厳しすぎることなど不可解なことがあります。

 

6-1 禁煙努力は税制控除―ニコチン

 2020年東京オリンピック開催を控えて禁煙運動が盛んになっています。セルフメディケーション推進の一環として生活習慣の改善は重要で禁煙も重要な目標です。禁煙を目指す人に薬を補助剤として使う方法があります。医療用のニコチネルTTSはニコチン含量が17.5、35、52.5mgと3段階あり経皮的にニコチンを吸収させるパッチ製剤で医師の指導により禁煙を達成する禁煙補助剤です。成分であるニコチンをスイッチ化し、パッチやガムとした製剤がOTC薬として販売され税制控除の対象になっています。(表1)

表1 禁煙補助を目的とするニコチン含有医薬品

注1 外用(貼付剤)と内用(ガム)ではニコチン含量が異なる。また製剤によっても違うので、目的によって使用法を確認すること

 製剤により目的に少し違いがありニコチン含量が違うので注意してください。パッチは 含量の違う2種を順序に従って使いますが、発売する2社で含量も違います。1社の説明書は25pにわたり、禁煙の取組み方を含め詳細に書いています。禁煙を決断されたらぜひ「禁煙支援」を標榜する「健康サポート薬局」で薬剤師に相談して協力してもらうことをすすめます。失敗したら医療機関の「禁煙外来」を紹介してもらい再挑戦してください。
 ガム1個の含量は2mgと少なく、使用量は1日4個から12個で、効能も禁煙時のイライラや集中困難などの緩和とされています。文字通りの禁煙補助のためのもので、強い意志がないとガムだけで禁煙達成は難しいですが、「税制控除」も援軍にセルフメディケーションを始めませんか。なお、多くの  OTC薬に配合されているニコチン酸、ニコチン酸アミドはビタミンの1種ですので間違わないようにしてください。

 

6-2 ビタミン類はメコバラミンが配合されないとダメ

 ビタミン類は自体はエネルギー源や身体の構成要素にはなりませんが、代謝過程で補酵素などの重要な働きをします。栄養素として必須であり、不足すると種々の身体の不具合につながります。食物から摂取するのが基本で、バランスのとれた食事―特に野菜類を多くとることが望まれています。不足を補うため医療用医薬品もありますが、一般用医薬品、医薬部外品、サプリメント、機能性食品などいわゆる「健康食品」も出回っていて広告、宣伝も多彩で選択に迷うといったのが実情でしょう。
 この中で今回のスイッチ化に該当するのはビタミンB12のみです。ビタミンB12は4種類ありますが、医薬品としてシアノコバラミン、メチルコバラミン(メコバラミン)が使われています。メコバラミンは活性型のB12で医療用ではメチコバール他の名前で注射薬と内用薬があり、内用の効能は末梢性神経障害とされています。ビタミン類の中でスイッチ化され税制控除対象となったのはメコバラミンのみですが、すべて配合剤です。効能は腰痛、神経痛などの症状の緩和と具体的に示され、1日の用量は1500㎍で医療用と同じです。総合ビタミン剤の中でメコバラミンが含有されていることで「税制控除」に公表されているビタミンB1主薬製剤があります。しかし、低用量(600㎍)含有の製剤については掲載されているものとないものがあります。効能表示は同じなので説明できません。ビタミン類ではメタコバラミン以外は対象外ということでしょう。公表では14製剤とありますが全ては確認できませんでした。(表2)

表2 神経系、循環器官系の不具合の調整に役立つスイッチ化OTC成分

注1 配合された他のビタミン類、他の成分、含量により効能表記が異なるので注意
注2 リスク分類の違いなどに疑点がある

 

6-3 血行障害を改善する作用を有する成分

 前項でメコバラミンが配合された製剤が税制控除対象と述べましたが、血行障害改善薬のヘプロニカートもスイッチ化されていて、これを含む配合剤が該当します。この中にはメコバラミンを配合した製剤もあり表2に示したとおりですが、公示されている製剤名について疑問の点があります。
 血行促進の作用を有するポリエチレンスルホン酸ナトリウムも過去に外用鎮痛・消炎剤として使用されましたが現在は医療用にはありません。スイッチ化された成分が配合された製剤が外用として税制控除としてあります。うっ血をとり、血行を改善して「しもやけ」などに効くといわれますが税制対象とすることには少し違和感があります。
 ビタミン類とはいえませんが循環器系に関連して心臓機能を強化するといわれる成分としてユビデカレノン(別名コエンザイムQ10:CoQ10)があります。強心剤としてノイキノンという名で医療用医薬品の花形として注目された過去がある医薬品です。今は心臓のビタミン薬という位置づけで、サプリメントに近い位置づけでセルフメディケーションに貢献しています。

 

6-4 女性の頻尿に有効なフラボキサート

 女性に多くみられる神経性頻尿、残尿感にフラボノイド系化合物が有効といわれ、フラボキサートが世界で標準薬として定着しています。日本ではブラダロンの名で泌尿器科を中心に処方されています。2008年に女性専用頻尿治療薬としてスイッチ化されました。現在3製剤が販売され、説明書には「女性における頻尿(排尿回数が多い)、残尿感」と明示され製剤には「レディ∆∆∆」という名称のものもあります。高齢社会において症状を自覚できますから、必要が増すOTC薬として重宝されると思います。(表3)

表3 身体の不調に対応するその他のスイッチ化OTC薬成分

注1 鼻炎に対する適用は表示されているが目への記載はない

 

6-5 点眼薬など外用薬

 花粉症などのアレルギーについては1章で述べました。症状の原因は共通することが多く、外用として鼻炎や眼の症状に対応する抗アレルギー成分としてペミロラストカリウム、アシタザノラスト、クロモグリク酸などがスイッチ化されています。ペミロラストカリウムは医療用としてアレギサール、アラジオフなどの商品名で内用もあり点眼薬はジェネリックをあわせ4品目あります。スイッチ化されたOTC点眼薬は1製剤のみで第砧爐忙慊蠅気譴討い泙后ちなみに同成分をスイッチ化した内用薬が1製剤あり眼に対する効能は記載されていませんが、薬局で相談されるとよいでしょう。外用薬特に点眼薬は濃度がポイントで量ではありませから、確実に1-2滴を眼の中に入れます。比較的新しいスイッチOTC薬であるペミロラストカリウムとアシタザノラストは医療用も一般用も単味で濃度は同じです。クロモグリク酸は汎用されている成分ですが医療用は単味で2%ですが一般用は半分の1%でクロルフェニラミンという抗ヒスタミンを配合した製剤が大半です。(表3)
 外用OTC薬として顔面に関連して口腔領域のものがあります。トリアムシノロンアセトニドは糖質コルチコステロイド作用を有し、医療用では筋肉注射の他、アフタ性口内炎治療用として口腔軟膏や貼付剤が使用されています。スイッチ化され現在軟膏、貼付剤など11製剤が一般用として市販されています。貼付剤には医療用と同じ名称で含量も変わりませんので口内炎に悩む方には朗報といえます。(表3)
 もうひとつ口腔疾患に有用な成分がスイッチ化され税制控除対象になっています。フッ化ナトリウムですが、医療用といっても歯科領域でむし歯予防に使用されている成分です。 医療用は主として歯科医師が治療を目的として濃度を調整して使いますが、一般用はむし歯予防を目的としたうがい薬のみです。スイッチ化という意味では低濃度の製剤が医薬部外品として販売されていますが税制控除対象に該当しません。(表3)

 

6-6 生活習慣病もスイッチOTC薬で治せるか―EPA-Eの今後

 さてセルフメディケーション支援の税制控除適用のスイッチOTC薬も最後の項になります。対象が生活習慣病といわれる領域についてです。(表4)ポリエンホスファチジルコリンはダイズから抽出したレシチン製剤ですが過去にはコレステロール代謝を改善するとし使用されましたが、現在は医療用として肝機能改善、高脂質血症などを効能で1製剤が使用されています。スイッチ化された一般用は3製剤ありますが製造はいずれも医療用と同じ企業で、効能は血清高コレステロールの改善としています。
 同じダイズ抽出物のソイステロール(大豆油不鹸化物)もコレステロールの吸収阻害の作用があるとされ高コレステロール低下薬として使用されましたが現在医療用はなく、先の公示ではスイッチOTC薬が14製剤とされていますが全てが販売されているか確認できませんでした。両成分共第3類医薬品とされていますが、むしろ健康食品として位置づけられるもので、また高コレステロール対応としては食事内容の是正が優先されるのでこれらの医薬品を税制控除対象とすることは疑問に思います。
 最後に数年前から話題を呼んでいるイコサペント酸(以下EPAと略)についてのべます。およそ半世紀前、グリーンランドに住む人たちに心疾患の少ないのは魚より摂取する不飽和脂肪酸が血栓症状を抑制する効果があることを発見したことが端緒です。その後日本で、イコサペント酸エチル(以下EPA-Eと略)が医薬品として開発され、現在はエパデールを 筆頭にジェネリックを含む26製剤が動脈硬化症、高脂血症を適用とする医療用として発売されています。EPA-Eのスイッチ化については論議の末、2012年に承認され現在1包600mgの製剤が販売されています。適用は「健康診断等で診断された、境界領域の中性脂肪値の改善」とあり、医療用と少し違います。薬の使用は検査値などデータを基にした専門医の診断が前提であるべきという医師からの意見もあり、妥当と考えます。しかし、あまり制約を厳しくすると、折角のセルフメディケーションの意欲を削ぐことになります。 食事で青魚をといっても、嫌いな方や毎日の献立をつくるのは無理な方も多いでしょう。幸いにもまったく同じ成分を有するサプリメントが販売されています。医薬品ではないので税制控除にはなりませんが、効果に遜色はないでしょう。信頼できる薬剤師によく聞いて選択されることをおすすめします。

表4 脂質代謝の改善に役立つスイッチ化OTC薬成分

 

6-7 疑問と提言

 5章までに解説した以外をとりあげたのでまとめるのに苦労しました。しかし、作業をしながらこの税制控除の仕組みには無理があると感じました。セルフメディケーションはあくまで本人が健康について関心をもち、自己の体調をチェックし(セルフケア)、日常生活において食事、運動、休養を総体的に管理することです。その過程で不具合に気づき医薬品を使って治療や予防をする場合があります。日本では国民皆保険制度が定着しているので、医療機関での診療は現物供与され、その費用は自己負担分を除いて保険金から支払われます。保険金といっても保険料のみでは不足で国税や地方税から拠出されています。日本におけるセルフメディケーションとは保険診療を受けないで、一般用医薬品またはそれに準じるもの(医薬部外品、いわゆる健康食品など)を自己判断で購入、使用して健康回復、維持をはかるという解釈が妥当でしょう。
 セルフメディケーションを啓発し、それを実施する国民に特典を付与しようとするならば、対象とする医薬品その他に制約を設けることは趣旨に反します。医薬部外品、トクホ、栄養機能食品、機能性表示食品について線引きが難しいならば「薬機法に基づく医薬品のうち薬局医薬品(医療用医薬品)を除く」とすることを提案します。
 スイッチOTC薬を対象とする今回の税制控除は税法上医療費控除の特例としていますがスイッチOTC薬の選択が不明です。医療用医薬品と一般用医薬品は同一で、1967年医療用医薬品について承認基準の見直しによるものです。その後開発、承認された新医薬品の中で一般用医薬品の成分として承認する(スイッチする)ことでスイッチOTC薬と呼ばれます。諸外国で処方せんなしで購入できる医薬品との整合性も考慮されている事情があります。矛盾が起きるのは当然で、医薬品に分類されているため今回対象となっている成分を含むスイッチOTC薬がある一方で、同じ成分のサプリメントは対象外です。
 ビタミン類の中でメコバラミンがスイッチ化されているためこれを含む総合ビタミン剤2製剤が税制控除対象になっていますが、これは主薬のフルスルチアミンの神経機能障害改善作用を主体としたものです。メコバラミンがシアノコバラミンに替わっている同企業の製品は対象外です。因みに両製剤の効能説明は全く同一です。税制控除の対象のメコバラミンが配合されたことだけで総合ビタミン剤を区分するのは解せません。
 血行促進の作用を有するポリエチレンスルホン酸ナトリウムも過去に外用鎮痛・消炎剤として使用されましたが現在は医療用にはありません。スイッチ化された成分が配合された製剤が外用として税制控除としてあります。うっ血をとり、血行を改善して「しもやけ」などに効くといわれますが税制対象とすることには少し違和感があります。
 ビタミンとはいえませんが、L-アスパラギン酸カルシウムは1992年にスイッチOTC薬になりました。本年1月13日の厚労省有効成分リストに記載されていますが、税制対象リストにはありません。現在医療用として低カルシウム血症、骨粗鬆症を効能として3製剤ありますが対応するスイッチOTC薬はありません。
 既に各章において述べましたが、セルフメディケーションを啓発促進の目的の税制控除とするならば、スイッチ化にかかわらず全てのOTC薬を対象とするよう拡大すべきです。同時に一般用医薬品を整理し、ビタミン類、体質改善を目的とする食品との境界領域、漢方や生薬類について業界ではなく、国民が理解し納得できる説明を準備しませんか。スイッチ成分も含め一般用医薬品と医療用(薬局医薬品)が共存するのは混乱のもとです。該当医薬品について原則保険給付対象から外し、一般用医薬品使用の説明を担う医師、薬剤師へ報酬を含めた配慮をする制度改革を提案します。

一般の皆様へ:この章ではその他として残りました領域を全て扱いましたので統一性を欠きわかりにくかったことをお詫びします。その上冒頭でも触れましたが、各領域で基準とするのが不明なことが多かったのも事実です。ビタミン類や生活改善の補助的役割を担う医薬品や関連物質が多い食品との境界領域であることが背景にあります。健康ブームに乗じて過剰ともいえる宣伝に惑わされないように信頼できる薬局、店舗販売業のお店で相談されてください。
薬局・薬剤師の方へ:今回の領域は確定した基準が不明なことが多く、疑問が続出しました。一般の方からの個別の商品名や配合成分についてのおたずねは、医薬品集などで検索しお答えください。さらに不明な点は製造販売または販売の企業にお問い合わせください。
 当協議会会員の薬剤師の方へはスイッチ化成分を含む製品について情報提供いたしますので事務局へご連絡ください。薬剤師の方には今後の活動にご協力頂きたく、当協議会会員に入会されるようお願いいたします。

2017年07月 更新