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村田正弘(セルフメディケーション推進協議会 専務理事)
10. 運動・スポーツの効用と注意
 暑い季節を迎えました。水泳のシーズンです、炎天下の甲子園の熱戦もわくわくしますね。今回はセルフメディケーションの一環として運動・スポーツがどのような役割を持つかについてお話します。

 運動やスポーツが身体によいということは誰でも漠然とわかっているようですが、その効用やなぜ注意が必要なのかについてはかなりあいまいではありませんか?事実、競技スポーツはともかく、人類が生誕以来無意識に現代まで続けてきた運動ですが、科学的に研究がされたのは最近のことで、まだ不明なことも多く残っています。

 よく、“最近、体力が衰えた”などといいますが、体力とはなんでしょうか。体力には、身体的な要素と精神的な要素があります。両者とも健全でなければ健康な生活に支障が起こります。運動に限れば身体的要素が問題ですが、体力とは防衛体力と行動体力で構成されます。
 防衛体力とは寒暖の差、病原微生物の侵入、酸素不足など身体に対するストレスへの抵抗力に相当します。一方、行動体力とは作業や運動能力のことで一般に運動スポーツはこれに該当します。運動は骨と骨とをつないでいる関節をまたいで結合している筋肉の収縮で、これを筋力といいます。筋肉の収縮には筋肉内のグリコーゲンまたはグルコース(ブドウ糖)の分解によって得られるエネルギーが必要となります。食べ物がブドウ糖になってエネルギーに転換されるには、肝臓の働きや呼吸系、循環系など身体の生理機能がフル回転しなければなりません。視覚、聴覚などの五感も関係しています。

 筋力は瞬発的な最大筋力と一定の力を持続させる持久筋力によって測られるのですが、後者はエネルギーが潤滑に供給される必要があります。持久筋力のトレーニングを行うと必然的に呼吸系、循環系の機能賦括を促し、成人病予防に寄与します。最近、介護保険制度にも筋力強化がメニューに加わりました。

 さて、ここで心得ておいてほしいことがあります。体力と加齢の問題です。体力の指標として、筋力、柔軟性、瞬発力、心肺機能などを取りあげ、年齢との相関性をみると、いずれも男女共に20数才を頂点に以後衰退していきます。頂点に達するまでの発達速度に対して、下降する老化速度は1/6といわれています。これを加齢現象(エイジング)といって生物である人間の定めといってよいでしょう。

 ただ、速度にはかなりの幅があり、運動によって速度を遅くする、すなわち老化防止が可能です。事実、運動によって靭帯や関節の強化、筋肉内代謝の円滑化など生理機能改善の他、情緒の安定、協調性などの精神機能の改善も証明されています。ただし、生理機能は、余り過度な刺激に対して機能が適応できなくなる「使いすぎの萎縮」が起こることがあります。また、刺激がないともう不要だとして「使わない萎縮」があります。「一念発起の3日坊主」は最悪です。

 では、運動・スポーツはいいことずくめでしょうか。運動は負荷が生理機能の限界を越えると、対応ができず時には致命的な危険を招くことがあります。運動をする場合にはあらかじめ、メディカルチェックを受けることをお勧めします。セルフチェックではありません。特に、中高年の方には、運動負荷を行った際の体力とのバランスを評価されることが大事です。また運動を行うときの6つの原則というのがあります。例えば個別性の原則といって、各個人の体力に応じたメニューを選択するという基本が示されています。

 高齢化社会と余暇の活用という社会環境に応じて、運動・スポーツは脚光を浴びています。文部科学省は体育・スポーツの普及振興を掲げて社会体育指導者を養成しています。厚生労働省は「アクティブ80ヘルスプラン」を継承し、運動指導者として「健康運動指導士」を養成し、実践にあたる「健康運動実践指導者」に実践を含めた講習を行っています。
 SMACはこの専門の方々と連携して、セルフメディケーション推進の輪を広めようとしています。中高年を対象としたスポーツクラブや自治体による講習などもありますから、指導者のアドバイスのもとに運動・スポーツを楽しんでください。
2005年08月 掲載