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村田正弘(セルフメディケーション推進協議会 専務理事)
12. セルフメディケーションを推進するために
 毎月更新してきました連載もちょうど1年になりました。先月(9月)開催しました学会では、市民の方を含め、実際にセルフメディケーションの推進に携わっている会員が集まり、この運動を盛り上げていくための討論を行いました。趣旨に反対という声はないけれど、目立った成果が見えてこないもどかしさを感じているといった思いは共通しているようです。

 その原因はどこにあるのでしょうか。また、それを解決していくにはどうしたらよいのか。いくつかのヒントがパネルディスカッションやポスター報告から得られました。今回はそれを中心に述べて、生活者や支援関係者にもう一度考えて頂けたらと思います。

 セルフメディケーションという言葉は外来語ですから知らなかった人もわからない人もいますが、「自分の健康を自分が主体性をもって守っていく」という概念を説明すると、100%に近いすべての生活者が納得してくれます。

 つまり、この考えは自然で特別な学習や決意をする必要はないのです。問題はそれをどうやって行うかという実践にあるのです。ある新聞社の統計調査は「すべての年齢層で男女とも、身体のことを気にしているけれど、日ごろは運動などしていない」という実態を鮮明に伝えています。そして、メディア情報によって食材や、商品、健康法を試そうとする人が半数いることもわかりました。

 一方、農水省の面接調査では、消費者は「信頼できる商品情報がほしい」といっています。ここで「信頼できる情報」とは情報そのものの評価ではなく、情報発信元と考えられます。なぜなら、生活者や消費者には情報の真偽や正確度を判定する方法をもたないからです。行政は「小さい政府」を目指しますから、官庁お墨付きの認証制や強制的な「生涯教育」などによる統制・管理はできないのは明白です。

 さて、この生活者を支援する側の状況はどうでしょうか。商品はすべて製造、流通、販売のルートを通じて消費者にわたります。近年の流通改革によって、流通と販売が接近し、スーパー・コンビニ・ドラッグストア等が伸びています。一方、製造メーカーが通販などによって直接消費者に商品を届ける形態も出現しています。商品の品質と情報は製造メーカーが創生し、これを消費者に伝達する責任が製・流・販が負っています。

 薬事法によって比較的責任所在が整理されている医薬品はともかく、他の商品や食や健康法は法制度そのものが未整備な部分もあり、そもそも生活習慣まで法規制するのはどうかという異論もあります。また現行の薬事法は医薬品として網をかぶせ過ぎという批判も強く、規制緩和が問われています。自由経済社会は競争社会ですから、メーカー間、販売店間の競争は熾烈となり、店舗数、利便性、広告、価格等が重要なポイントとなります。品質と情報−医薬品では有効性と安全性に集約されます−は責任ではあっても競争の決め手にはなりにくいのです。

 パネルディスカッションでは、職域別の代表の方にセルフメディケーションの実践について伺いました。その結果思いは同じでも、具体的な実践ではかなり違いがあることがわかりました。パネリストの方は各領域の専門または専従されている方ですが、セルフメディケーションを実践する生活者は「素人」です。「素人」はどの領域もそこそこに、安心して実践したいという思いがあります。そのことをバネリストの方たちも気づいているようでした。

 つまり、生活者に接する支援者の相互乗り入れが必要なのです。生活者自体は1億近い数がいますので、支援者も膨大な数が必要です。薬科大学にセルフメディケーションを主軸に必要な知識・技術を修得するコースの設定など将来を見据えた支援者の養成も必要でしょう。しかし当面の対応として、市町村単位にモデル事業を立ち上げたいと思いますが、協力頂ける自治体はないでしょうか。

 SMACは生活者の本音に満足できるように、信頼できる情報の発信元、支援する輪をつなぐ接着剤の役割として機能していくことを目指します。
2005年10月 掲載